ずっと誰かと分け合いたいと思っていたけど、いつまで経っても分け合える誰かには会えずに来たように思う。
分け合って、わからないけど認め合って、それでもそのままで生きていけたら、いつか雨が止んで、明日がくっきり晴れていて、心の底から快哉を叫ぶような、そんな日が来ればいいのにって、ずっと思っていた。
映画はフィクションで、作り物だ。だけどその嘘の向こう側に本当の気持ちを伝えようとして奮闘する誰かが居る。そのことに気づいて心が震える映画が、10年に一本くらいあるから、私は映画に出会うのが大好きだ。『怪物』は、そんな映画だった。
話したいけど、話せない。躊躇っている間に勝手に想像されてしまう。そこにあるのはただ誤解。
こう言っておけば、みんな安心するでしょ、普通そうでしょう? ね、だから深く考えなくていいよ。
そうやって多くの人は、自分が安心できる「普通」に心を埋没させて生きてる気がする。
でもね、マイノリティとマジョリティって2つしかないわけじゃ無いよ。ナマケモノやマンボウやカタツムリやキリンやウマや、色々な種類の動物がいるし、「怪物」は、ただその中の1つの種に過ぎないんじゃ無いかな。
とても多くの人が「日本人」で「普通」だと思っている環境のなかで、笑顔を作り続けることって、残酷だ。
残酷の大雨をやり過ごした先に、台風一過の晴れた日を、作れるのは、この映画を観て、少しでも心を動かされたあなたたちなんですよ。そう問いかけられたまま映画館を出ると小雨が降っていたけど、今日は傘をささずに少し濡れて帰ろう。