このレビューはネタバレを含みます
バズ・ラーマンらしいカメラワークのギミックは控えめで、その分エルヴィス自身の葛藤にフォーカスが当たる。音楽と編集、映像の融合はさすがで、観ているこちらは画と音のグルーヴに浸りながらエルヴィス自身の感覚を共有するような気持ちになっていく。みんな仕方ない選択を続けることに説得力のあるシナリオで、最期まで一気に連れて行かれた。
彼が世を去る結末は切なく、死の原因は彼が求め続けたファンからの愛である、というのは独自の解釈だろうが、本人にしてみれば、そこにしか理由が無かったのだろうと思わずにおれず、それがまたとても哀しい。
テント張りのゴスペル教会で、初めにマスとの交歓を味わった彼にとって、最期までマスからの愛を求め続けるしか術が無い。
エンターテイナーとしての生き様を、どうしようもなさで描き切った名作だと思う。