みはなだ

怪物のみはなだのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.3
ゆったりと響くピアノの音がそれぞれの場面、台詞と調和しながら生まれていく景色は、この映画にしか出せない唯一無二の美しさだった。

安藤サクラに田中裕子、瑛太といった俳優たちの凄み、坂本龍一の奏でる音、坂元裕二の言葉選び、子役の子らの真っ直ぐな目、全てに惹きつけられる。

同じ事柄であっても、それぞれの立場によって見方、感じ方、守ろうとするものはこうも変わるものかと、改めてぐっと突きつけられる二時間。

いつの間にか見る側の目線としての立場を試されているような居心地の悪さを感じながらも、是枝監督、脚本家の坂元さんが表現した世界を知りたいと願う、不思議な感覚だった。

そして怪物というタイトルに込められた意味。
個人的な解釈に過ぎないけれど、憶測だけで善し悪しを決めつけてしまうことの怖さそのものが怪物なのかもしれないなとふと思う。

自然に、時に荒々しく感情を揺さぶられながらも観終えた時に残るのは、当たり前だと感じてしまっていることが、日々どれだけあるのだろうという事。
そしてそれが、誰かを苦しめているかもしれないという事。

揺らめく木漏れ日の光の中で颯爽と駆け抜ける子供たちと、そんな二人の姿を優しくも儚い音が包み込むラスト。
ああ、観に来て良かったと心から思う。
みはなだ

みはなだ