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せかいのおきくのmatsucoのレビュー・感想・評価

せかいのおきく(2023年製作の映画)
5.0
なにこれ何この映画、嘘でしょ超面白いんですけど…。うっそだあ、マジか、うーわっ、ってぐらい面白く、そして素敵な映画だったんだよ。小田和正のかの有名な名曲タイトルぐらい語彙力がもう…。この映画の世界観やストーリーを上手く説明が出来ないや。
江戸時代末期、貧乏な生活をしている若者達の、リアルな暮らし・世界を描いている、決してきれいではないけれど、だけど本当に青春がここにあるなあと強く感じられる作品。私は、知識が乏しいせいか、時代劇や洋画は文化を理解したりするのに時間がかかって心にすんなりとは入ってこない為敬遠しがちなのだが、そんな時代劇や洋画でも、たまに私の心にいとも簡単に侵入してくるものもある。それは、ひとなつこい後輩のように、すんなりと人の懐に入ってくる。「せかいのおきく」もまさにそうだった。何故か…。こんなに苦しくて辛いのにな。おそらくだけど、ベースが、私の好きなジャンルでもある、庶民の生活をリアル且つ少しコミカルに描いてくれてるから。(本当は今の時代からは想像出来ないような面倒くさいことやむず痒いほど苦しい生活を描いているんだけど、程よいコミカル具合が面白く心地良い笑いを誘ってくれる。) そして、面白い映画を形成する上で欠かせない条件のNo.1か2に入ると思うぐらい重要でもある、「登場人物が魅力的でいとおしい存在」であること、ってところがばっちり過ぎた◎いとおしさ100の人達がそこにいた。
黒木華、池松壮亮、寛一郎…(字余り…)。彼ら全員最高だった。彼らの良いところむっちゃ出てた。濃縮還元ありがとう。この人達でしか出来ない、作れない人物・キャラクターでした。(関係無いけど、黒木華に興味ない人でも絶対黒木華を好きになるマイリストとして、「幕が上がる」「甘いお酒でうがい」「デザイナー渋井直人の休日」があるけど、「せかいのおきく」も今日から入れちゃう。) 寛一郎も役にはまり過ぎてて、とても良かった◎ 池松壮亮も、これこれ〜!この池松君が見たかった、会いたかったんよ…!と言わんばかりの良さよ。矢亮というキャラクター、とても良かったね。割と三度の飯より親父ギャグに夢中さ♪な私のギャグ欲を満たしてくれる、もっと欲しさせてくれるぐらいこまめにギャグを差し込んでくれる矢亮は、今の会社で働く上で私が一番欲している人材かもとか思った。人事部なら即採用。好きだった。人ってどんなに辛くても、笑いに変えるユーモアがある人ほどどんな境遇でも実は一番幸せに暮らせるコツを掴んだ数少ない人なんではとまで思っちゃった。(言い過ぎか、平和ボケしてるだけだね私は。すみません)
話を戻して…。冒頭で3人がはち合わすシーンとか、場所が場所な癖に、一発で観客のハート鷲掴みだもんなあ。話が、1秒1秒と進む度に、この作品の虜になってく感覚になる。出てくる人達みんなを好きになっていくと同時に、映画がもっと好きになる。あとあと、魅力的なこのキャラクターや世界観、この感じ何かに似てると思ったけど、「この世界の片隅に」を観てる時の多幸感を思い出して…。観終わった後映画館の壁に貼ってあるポスターを見つけて写真をカシャカシャ撮ってたら、この世界の〜の著者のこうの史代さんの感想コメントと、こうのさんが描いた絵がポスターにあるの見てまた興奮した。こうのさんが描いたおきくの絵も、この映画を観たけどどう感想を伝えて良いか分からない私の心を代弁してくれたようにも感じたのだよ…こんな事ってあるんだね。(←「代弁してくれたように〜」ってところを、劇中の池松壮亮演じる矢亮じゃないけど今笑うところだぜと言いたい〜言いたい〜笑。)
映画を観てる時は悲しい・切ない・嬉しいの涙が何度か流れたけど、観終わった後、幸せな思い出し涙が流れて、そのタイミングでのこうのさんの絵が見れて、感無量過ぎた。阪本順治監督よ…グッジョブ人間過ぎますぜ。ありがとう。
劇場にいた人達と一言だけ会話して良いなら、今日という金曜日の勝者は私達だったんだ、って言いたかった。幸せ。
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