Jun潤

しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜のJun潤のレビュー・感想・評価

3.7
2023.08.04

毎年恒例シリーズ。
今年は春ではなく夏公開、その理由かは分かりませんが、今年のしんちゃんはシリーズ初の3DCG。
ドラえもんやスラムダンクに続く流れかと思いきや、制作期間6年、白組は関わっていますが監督・脚本は山崎貴ではなく大根仁のため、“しん泣き”などという言葉は存在しないので悪しからず。
しかし庵野監督の“シン”シリーズと偶然か必然かタイミングが合うとは、持っているやらいないやら。
それはそうと今作に松坂桃李が声優として出演するということで、“シン”と“しん”制覇ですね。
中身的にもしんちゃんの世界観におバカSFが入り込んだ王道パターンの感じで、それが3DCGと大根監督によってどのように仕上がるのか、期待です。

「20」と「23」が交わる年、空から二つの星が落ちてくるー。
大予言者ノストラダムスの隣に住んでいたヌスットラダマスが遺した予言の通り、二つの隕石が地球に落ちてくる。
一つは新橋でティッシュ配りをする冴えないフリーター・非理谷充に、そしてもう一つは春日部のおバカな幼稚園児・野原しんのすけの元に落ちる。
その隕石には、超能力を授ける力があった。
お片付けや運動会にしか使わないしんのすけに対し、充は一般男性と結婚した推しアイドルへの復讐や、世の中への不平不満に対するストレス発散に超能力を使っていた。
そんなしんのすけの元には、“SECS”の池袋教授と深谷が、充の元には“令和てんぷく団”のヌスットラダマスⅡ世が訪れる。
そして、地球の存亡と日本の未来を賭けた、『超能力大決戦』の火蓋が切って落とされる!

まずは今作最大のポイントである3DCGについて。
個人的には悪くなかったと思います。
他の2Dアニメーションの3DCG化に比べると、立体的になった顔に手書きで表情を乗せていたような感じでしたが、クレしんコンテンツに関しては、30年近くに渡って固められてきたシルエットのイメージと、イキイキとしたしんちゃん達の表情がマッチしていたと思います。
背景や動きについても特に違和感もなく、まさに“しん次元”の映像を観せてくれた作品でした。

次にストーリーについて、何やらネットの方でキャッチコピーが自◯党的な感じという意見も散見され、今作の敵組織の名称も令和てんぷく団というどストレートなネーミングでしたが、かの『オトナ帝国』も今考えると強めの懐古主義的な敵に対して未来への希望を説くなど、劇場版シリーズにはブラックジョークや皮肉、ポジティブなメッセージを含ませる流れはありましたね。
特にしんちゃんが持つ純粋な未来への希望や、その将来に期待して何でもやらせてくれるし何でも受け入れてくれるひろしやみさえなど、出発点こそ青年漫画でしたが、国民的アニメとなった今となっては、理想の家族を描くコンテンツとして、大切なメッセージをストレートに伝えてくれる貴重な存在だと思います。
しかしやはりグリグリはしん次元には持ち込めず、メリーゴーランドごっこになってしまったか。

大根監督節については個人的によく出ていたかなと思います。
綺麗で面白いだけでは終わらせずにシリアスな要素を挟んでくるところや、相変わらず遊びまくりなエンドロールと、監督作品は久しぶりでしたがクレしんコンテンツだろうとちゃんと発揮していましたね。
ギャグシーンについても、子どもも楽しめる分かりやすいものから、大人のツボも押さえている渋さもあってまた良かったですね。

超能力については、ストーリー上はサイコキネシスとテレポーテーションにフィーチャーしつつ、終盤で半ば強引に透視とテレパシーを出して、言及された五つの能力の最後の一つ、予言は超能力ではなくひろしがしんのすけに対して抱く希望という形で出していたのがまぁエモかった。
3DCGという新しい要素に加え、軽い全員紹介シーンや王道のストーリー展開、そして3DCGでしか出せない迫力の場面が展開されていました。
しかしラストバトルで中学生(高校生?)との素手の殴り合いをしんちゃんだけがするというのもまた珍しい気がしますね。

しかしなぜ松坂桃李はこんなにも非リアのオタク陰キャ役が似合いすぎてしまうんだ……。
Jun潤

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