滝井椎野

君たちはどう生きるかの滝井椎野のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

おそらく宮崎駿最後の作品となるであろう本作、ジブリとは=宮崎駿であり、宮崎駿とは=ジブリである……というのを強く感じた。
変態的天才クリエイターの頭の中はこんなんなのか……となかなか衝撃的な作品。

基本的に難解である本作、足りぬ頭で無理やりテーマを考察するならば『世界のバランス』だろうか。
積み木を積み上げる行為=世界を作るというのは作中で散々言われるが、3日で1つずつゆっくりと積み上げるというのが大事な点で、昨今の急激な発展とそれに伴う世界のバランスの崩壊は何となくであるが誰もが感じるところ。勿論発展が悪いことではないのだが、上で書いたように『ゆっくりと』というのが本作の言いたいところだったのではないだろうか。
人間、何にでも言えるが生き急いでも良いことはない。本作でも癇癪起こしたインコが急いで雑に積み木を積み上げるが、結果それが崩れて世界が崩壊する。何事もゆっくり丁寧に……が大切だと何となく思った。

個人的に印象的だったのが、インコが「まるで天国のようだ」と涙するシーン。何者にも侵されない自然のあるがままの世界こそ、やはり宮崎駿の理想とする世界なのだろうか。このあたりは『もののけ姫』辺りの初期作品から主張が一貫しているのだろう。

……等と語ればキリのない辺り、流石の宮崎駿である。
何となくだが、いよいよこれが最後になりそうということで後世まで語られ続けることが出来るような作品を作りたかったのではないだろうか。
作中散りばめられた今までのジブリ作品のピースや、作品全体のメッセージ性等、とにかくすべてのシーンに自身の想いを詰め込んでやろうという気概を感じた。

自然への想いやアニメーションの楽しさ、母子の絆等、おそらく宮崎駿が後世に伝えたいことなのだろうな……というようなものがこれでもかと詰め込まれていて、(あぁ、いよいよ最後の作品なんだな……)と少しセンチな気持ちになってしまった。
公開中にもう何度かは観ておこうと思う。
滝井椎野

滝井椎野