このレビューはネタバレを含みます
ひさしぶりのアニメーション映画
抽象的なものからしか感じ得ることのできない、人の頭の中をどストレートにとことん覗くような感覚がいい。頭の中の世界と、その色とか形とか。
特に 過去とか夢の中とかの曖昧な記憶の中にだけに存在する空気と熱のような何かが体内に染み渡っていく感覚が心地よかった
見終わった後の感覚は、昨晩に観たであろう夢の記憶の断片を思い返している朝のそれ。
●今作で扉でそれぞれの時代に帰っていくところ
すきだった
今作の「時」の描き方は多くの人が抱くであろう時間の概念を震わせる気がした。
時間は ずっと繋がっているという意識
そして、ある地点の瞬間は 今も尚 呼吸と共に存在し続けているという意識
時は振り返れば振り返るほどに、その立体感や奥行きを失っていくように時折感じる。平坦で動かなくなったそれは、存在が誠かどうかも疑わしくなる。けれども時は ただ重なり続けていて、その重なりのそれぞれはいつになっても時空を超えてリアルとして存在しているとしたらどうだろうか。そういう、ある種の妄想のような考え方が自分のなかにはあって。今作を見て、その妄想に骨組みが加わった気がする。
「過去」が「今」とは対照的な過去という化石としてではなくて、ずっと今もなお、水分や空気すらあるままに絶え間なく呼吸を続けているとしたらいいなって。
あの時にパンを焼いてバターとジャムをたっぷりに頬張った彼女は、いまもそうしてる。
あの時の彼女は自分が過去になることを意識などしていなくて、ただ懸命にあのときの「今」を生きていただけ。
時の仕組みとしての過去になろうと、どの瞬間のどの人間も「いま」を生きているということ
時代はただ「だれか」が「今を生きること」の連鎖そのものでしかないのかもしれない。そして、その一片が「この私」、ただそれだけ