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君たちはどう生きるかのraruwoのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

映画の冒頭では死んだ母を想って涙するような少年だ。父や後妻からの扱いに邪険にされる訳では全く無いが、思春期にある焦燥感から自分をあえて傷つける。まだまだ構って欲しいのだ。青鷺に導かれて塔に入る。青鷺は何か。その異形は、醜く打算的に思える。媚びへつらい抜け目ない。少年にとって忌み嫌う「大人」を現すアイコンにも見える。塔は少年の内面世界だろう。歪で脈略が無く粗暴な面もあるが人を拒むような無垢や厳粛さもある。
映画を通して少年はあらゆる場面で女性と対峙することになる。遺伝子的に自分とは全く異なる女性に、時に母性を乞い時に相容れないものと反発する。護るべき存在として義務感に突き動かされ、父の再婚相手は時に実母の面影もあって特に複雑な想いがあるに違いない。よわい90歳近い宮崎駿監督の女性に対する憧れや幻滅、未だ求めて止むことのない母への想いが塗り込められていると感じるのは、過言ではないだろう。無性別なキリコの存在もニュートラルな視点で面白い。
映画のクライマックスで少年は、世界がこのまま悪しき道を進むとしても、自分の半径数メートルの世界を愛し愛されて生きる事を選ぶ。宮崎駿自身を象徴する少年は、青鷺の打算も身につけながら母性の呪縛を解かれて一段大人になって帰還したように見えはしないだろうか。
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