ちぐはぐ

君たちはどう生きるかのちぐはぐのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
5.0
宮崎駿のアニメーターとしてのテーマは絵が動くということへの探究。本作は過去作を総動員して、彼の人生を通して発見してきたアニメーションの宮崎ディテールが散見される。
もう弾切れを起こしても良いから撃ちまくる風にも感じる本作の宮崎には寂しさと共感を感じさせるものがある。
もう俺は高畑には敵わない。それでも自分の作りたいものを作る、そんな感じはクリエイターならグッと涙腺を刺激するものがあります。長く一線走ってきたアニメーターの悟りの境地のような作品で、それでいて一人の人間らしさが溢れる大好きな描かれ方の作品でした。

難しいという意見が散見されるが、作品の意味を深く考えても、宮崎自身すら全てはわからないで描いているかもしれない作品。自分史なんだからきれいなわかりやすい話にはなりにくい。話の筋ではなく表現を優先させているのではと思わせる箇所が随所にある。そこを深掘りしすぎず単純に解釈することをお勧めする。

そもそも作品としてのクオリティは異次元で、アカデミー賞受賞が証明してくれていると思う。同じ作画監督を有した弟子の庵野さんのシンエヴァンゲリオンは国際賞を取れないのかと当時思ったけど、庵野の父性的な物に幼児性で対抗する、しかしそれは破れて大人になった、みたいなストーリーより、宮崎駿の母性的な物への憧れ、終わり!のような普遍性を強く描けることこそが宮崎の強みで、それはもう本当に天国のパクさんも認めてくれてると思うぞ。
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