もるがな

シティーハンターのもるがなのレビュー・感想・評価

シティーハンター(2024年製作の映画)
4.6
漫画アニメの実写化に対する不信感を愛の一撃で葬った怪作。全体的にリアリティよりもケレン味のあるファンタジー寄りのアクションシーンが多いが、これは解釈一致であり、ハードボイルドな側面がある作風ではありながらも、基本は軟派かつシティ派な作品であり、またアニメの印象が強い人間からすると、リアル志向よりも人外のごときド派手なアクションシーンにこそ最もシティハンターらしさを感じると言っても過言ではない。

当然、本作も主人公冴羽獠の人間離れしたアクションがこれでもかというぐらい堪能できるわけだが、難点と言えば同時期の他作品と比較してシティハンターには名悪役があまりいないことで、そもそも冴羽自体が強すぎるのもあり緊迫感がそれほどないわけだが、裏を返せば主人公さえキマっていればそれはシティーハンターになるという自由度の高さがある。そういう意味では主人公役のハードルは高かったわけだが、鈴木亮平演じる冴羽獠の完成度があまりにも高すぎるのが本作の一番のポイントであり、これを超えるハマり役は存在しないだろう。時代設定含めて改変シーンも多いわけだが、冴羽周りの台詞は全ていかにも「言いそう」な言葉であるという説得力が凄まじく、オリジナルでこの雰囲気を出せるのは凄すぎるとしか言いようがない。まさに100点満点であり、実写版冴羽獠の完璧さがこの映画を支えていると言ってもいいだろう。

アクションのリアリティレベルに合わせてか、ストーリーも驚くほどシンプルかつ、敵も特撮顔負けの悪のアジトがあるというリアリティガン無視っぷりには流石に笑ってしまったが、逆に変にこだわりすぎて鈍重になるよりこれぐらい無視してくれたほうが逆に見やすかったとさえ思う。一言でいうなら筋立ても敵の存在も荒唐無稽であるものの、それを言うのは野暮と言うもので、街の風景のリアリズムがギリギリその荒唐無稽さを薄めていたのも塩梅が上手いと思う。シティーハンターの裏主人公は何を隠そう新宿である。

気軽に見れる映画でありつつ、令和のシティーハンターとしても完璧な作品で、とても楽しい映画だった。傑作。
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