豚肉丸

殺人に関する短いフィルムの豚肉丸のレビュー・感想・評価

殺人に関する短いフィルム(1987年製作の映画)
4.1
衝動的にタクシー運転手を殺してしまった青年のお話

タイトルの情報量の以上でも以下でもない。まさに「殺人に関する短いフィルム」の名の通り、殺人と死刑制度を主軸とした80分間の短いフィルムである。

青年は衝動的にタクシー運転手を殺害する。それの理由は何も語られない。
普通ならこの青年は「悪」と認定されて司法側を「善」と捉え、「悪」の青年が死刑執行される場面にはカタルシスを感じるはずだが...この映画では青年側に同情を抱かせるような感じの描かれ方をしているのが印象的だった。
青年には重くて辛い過去があり、死刑執行の場面では青年側がとても可哀想に描かれる。それとは対照的に司法側は常に冷淡で、死刑執行の場面では気を荒くして青年を乱暴に扱う。するとどことなく、司法側が醜い「悪」に見えてしまうのだ。

まあ明らかに制作側の政治的意図が透けて見える(し、実際この映画の影響でポーランドの死刑制度は廃止された)ので映画の印象としては正直微妙...って感覚ではあるが、一方的な悪を描かない作りはちょっと面白かった。
ただやっぱり、被害者側の人生にはフォーカスされず衝動的に人を殺した加害者側の人生にフォーカスして同情を抱かせる作りはなんとなくグロテスクに思えなくもないが...
豚肉丸

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