二瓶ちゃん

死体の人の二瓶ちゃんのレビュー・感想・評価

死体の人(2022年製作の映画)
3.9
懇意にしていた映画館で今作のカレンダーを発見したため鑑賞。

Rabbit house、Mi-CAN。

総括するなら、作り手の不器用ながらもまっすぐなメッセージ伝わる邦画の佳作。

特異的に二つの異常な事象が繰り広げられる。
①死体の人が出てくる②男が妊娠する
この二つの事象を除けば、地に足のついていない佐藤泰志作品のような感じ。あれよりは明るいけどところどころ退廃的な色合いを感じていた。

今日的な価値観に基づいたある意味での繊細さが足りないかもとは思っていた。(顔を映さないにしても)ルッキズム、性描写、死に対する表現。

繊細さが欠けているのはある意味今作をコメディとして出しているからで、狙ってやっているのかとも思わされた。

悪役が悪役のまま終わってしまったけど、憎める悪役のいる映画は良いと思った。もうちょっと共感できる悪役だといいなとも思った。

コメディとはいえ、親が子を思う気持ちという超コテコテのテーマではあるけど、じんわりくるものがあった。私が演劇経験者だからか。

安く使われることに慣れきっていても、自分のプライドという部分を譲らない主人公。堕落退廃その4文字に浸りきっていたつもりが、その中で息をして明るく生きようとするヒロイン。

主人公の死体としての演技の成長はもちろん、ヒロインがアパートで殺人鬼になる周辺の唐田の演技は、前半で見せていた女としての存在を超え、すっかり俳優だった。上手くいえないけど。

主人公の妊娠設定は、物語に注目して見てもらうためのフックではあったけど、ちょっとそれ自体のオチが弱かったかもとは思った。

そんなにわかる俳優さん居なかったけど、主題歌も含めて久々にいい話を描いた邦画を見たと思う。死体の人を主役にした映画は初めて見た。ということでこの評価。

なんだかんだ死ぬことと生まれることについての映画だったような気がする。安易に2人を恋愛関係にもって見せない最後が良い。