二瓶ちゃん

ミッシングの二瓶ちゃんのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.8
吉田恵輔最新作ということでポッドキャストを聴きつつ鑑賞。

WB WOWOW FILMS STARSANDS

【新しいと言えば新しいんだけどね】

確かに新しい演技の幅を見せつけられたけど、途中ぐらいまで石原さとみがこの役じゃなかったらなぁって考えてしまった、あと中村倫也のヌメヌメした滑舌が気になる。あんなんじゃあ娘が帰ってきても来なくてもスマホ依存ヒステリックおばさんかな、と思ったら漂ってくる柔らかな光。

かなりガツンときたし精神的に弱い時にはおすすめできない、けども空白よりも控えめ運転だった気がする。あちらを先に見たからってのもあるんだろうな。

この映画の救いは、喧嘩するけど正論かましているような旦那と、弟の職場のカトウシンスケ先輩なんだと思う。カトウシンスケに限っては良心とすら思ってた。スクリーンを前に祈ってすらいた。

どストレートに言うと、前半は石原さとみのイライラするヒステリーな演技と悪役の安易な登場とその動機が非常に表層的でつまらなかった。

監督史上最も覚悟のいるとか、私たちは心を失ったとか、この映画に使われているキャッチコピーに対しては、「本気でそれ言ってる?」と思った。形容し難い映画なんだとは思うけど、そんな重いキャッチコピーが使われる映画に相応しいのか?なんか違うなぁと鑑賞後にフライヤーを見て思った。

「神は見返りを求める」の方がテーマはライトながらかなりヘビーな人間模様が見れたし、「空白」もあって、かなり期待していたけど、スターサンズ色が強くなったからなのか、人間描写というよりヒステリー、心を捉えるというよりマスコミのカメラを捉える映画。そんな気がした。

眠るサオリの手にかかる希望的な幻を見せてくるのは「ちょっと思い出しただけ」を思い出した。

かなり好きだし刺激強めだけどもっと強いの待ってます監督、ということでこの評価。

とか書いたくせにパンチラインが多すぎる作品だったのでまた見ちゃうかも。あと人の心をざわっとさせるセリフがうますぎる。アミノ酸かよってぐらい。

今作の背景になっている社会の人々があまりにもグロテスクなぐらいヒリヒリしていて暴力的であったり、話が通じないとか、チラシを読んでくれないあの人だったりとか、描き手が社会に絶望している気がするけど、これはあくまでも主人公であるサオリの視野なんだと思う。

自分が落ちている時の、自分から見える世界ってすごく暗くてネガティブに映るような気がする。逆も然り。

The world of you depends on how you see the world

人間の闇みたいな部分、人間描写的にもそうなんだけど、人と人がわかりあう部分を、あの車内のシーンをもっと強く、もっと多くしたら個人的には納得行ったのかもしれない。

色々な他人事に思えることばかりだったかもしれないけど、サオリが最終的にさくらちゃん事件のことを自分事と思い込んで動いて、その当事者に逢えた。自分事が他人事と重なり合って、社会は温かくなれ!!!!!!