さりさり

ひとくず 新ディレクターズカットのさりさりのレビュー・感想・評価

4.7
久々の号泣。

*****

虐待を受け続け、食べ物もなく、電気も止められた部屋に置き去りにされた少女。
そこにたまたま空き巣に入った泥棒のおじさん。
実は泥棒のおじさんも過去に虐待を受けていた経験があるのだ。
少女に昔の自分の姿を重ねた泥棒のおじさんは、彼女に救いの手を差しのべようとするが…。

*****

普段、お涙頂戴の物語はあまり好きではないのだが、この作品には素直に泣かされてもいいと思った。
確かにツッコミどころはチョコチョコあるし、思いっきりベタ。
昭和テイストで泥臭い雰囲気、苦手な人は苦手だろう。
でも私はたまらなく好きだった。

主役の泥棒のおじさんの “カネマサ” が、もうどうしようもなく短気でヤクザな男なのだ。
でも彼も本当は愛情に飢えていたんだと思う。
ごく当たり前の普通の家族が欲しかっただけなんだろう。

たくさんの食事のシーンが出て来る。
食べ物を目の前にした少女に「食べろ」と何度も言う。
「早く食べろ」「いいから食べろ」と何度も何度も言う。
親が子のことで最も気にかけることは「ちゃんと食べているか」ということだ。
子どもにお腹いっぱい食べさせたいと思うのは、親の本能だ。
カネマサが少女にかけた愛情は、親が子に与える愛情と同じものだったんだろうと思う。

エンドロール後のあのシーンは賛否両論。
でも私はあのシーンで号泣だった。
こらえていたものが全部吹き出した感じ。
蛇足だと言う人もいるけれど、あのシーンがあったからこそ「みんなが赦された」という意味になったんだと思うな。
さりさり

さりさり