計算された映像美が登場人物の恋愛模様を際立たせている映画。
今よりも何段階か不便で同性愛者への差別も酷かった1999年、コルとアダムの偶然過ぎる出会いはお互いにとって運命的だったはず。
進路のこともダンスのことも優先事項から外れるくらい、人を選べるほど人間関係の多くないコルにとって大事な出会いなのだ。
外界から隔絶された二人だけの世界はとても脆く、制度上の差別によって簡単に引き裂かれてしまう。
本作では結構な尺を使って11年後のストーリーも描いており、あり得た未来とそうでない現実の間を主にコルが苦悩していく様子は本当に苦しい。
映画の構成自体は『ムーンライト』にとても似ているけど、こちらはより写実的な分、自分事として、というより一人の人間としてのコルの人生に思いを馳せることができた……。