竜平

風の谷のナウシカの竜平のレビュー・感想・評価

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)
4.4
大規模な戦争によって産業文明が崩壊してから1000年後の世界。人間にとって有毒な瘴気(ガス)を発する「腐海」と呼ばれる森に大地が覆われゆく中で、争いを続ける人々とそこに巻き込まれることになる「風の谷」の王妃「ナウシカ」の奮闘の姿を描く。

めちゃくちゃ久しぶりの鑑賞。今見て思うけど今作はこれ以降のすべての宮崎駿作品、及びジブリ作品の礎となってるんじゃないか、なんて。例えばファンタジー要素で言えば次回作の『ラピュタ』とか、テーマや構成としては『もののけ姫』とか、設定や暗喩の細かさでは『千と千尋』やそれ以降の作品などなど。で、ひとまず原作コミックのことは置いとくとしてやはり今作で特筆すべきなのがその唯一無二の世界観。人類の過去の過ち(戦争)によって成り立ってしまったという、生きていくにはあまりにも過酷な世界。そこでの腐海という森のこと、王蟲の存在、語り継がれている伝説など、今見てもいろいろ考える余地があるというか考察が楽しいというか。更に設定やストーリーも見事で、「トルメキア」や「ペジテ」といったそれぞれ規模の異なる国があり、そこへ現れるのがかつて地上を火の海に変えたという「巨神兵」の卵で、それを巡る争いに巻き込まれることになるのが平穏に暮らしていた「風の谷」の民たちで、ここらへん人と人、国と国の争いと犠牲になる民衆という、描写こそ易しいもののなかなかエグくて残酷な話。子供の頃はそこらへんとくにわからずデカ虫やら何やらの見た目のインパクトだけで楽しんでた気がするんだけど、大人になってからじっくり見るとその奥深さに見入ってしまうはず。そして主人公のナウシカがね、カワイイ&かっこいいんだこれが。清らかでありつつ、とあるシーンでは我を忘れるほど怒り狂ったりもして、そこでのユパ様もまたシブいんだよねーなんて。

ちなみに宮崎駿による原作コミックは全7巻あって、今作はその2巻分の内容。コミックのほうを読むと更に細かい設定と奥深い世界観と、超がつくほど果てしないそのストーリーにやられるはず。映画でハマった人は読んでみるべし、マジですげー領域まで連れていかれるよん。まぁ説明しすぎず詰め込みすぎずしかしキレイにまとまってるこの映画版も俺は俄然好きだよん。おわり。
竜平

竜平