あんがすざろっく

風の谷のナウシカのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)
4.5
先日、奥さんと話している時に「風の谷のナウシカ」の話題が出たんです。
奥さんは小学生の頃にナウシカを近所の公民館で見ていて、やっぱり王蟲が嫌だったのと、世界観が難しくて好きになれなかったようです。

「俺も王蟲とか好きじゃないけど、今見返したら、もしかしたら監督の言いたいこととか、テーマ性が分かるんじゃないかなぁ」
と話したら、奥さんがポカーンとしていて。

「えっ…映画をそういう見方してたの⁉︎」

逆に僕もポカーンとなってしまい。
ふと気付きました。

そうか。うちの奥さんは、映画を見る時は、テーマだとか、そんな難しいことを考えないで見るんだった。
楽しいか、悲しいか、感動するか。
テーマなんてものは、後からついてくるもの。


うちの奥さんだけじゃなくて、難しいこととか、理屈を抜きで映画を楽しむ方もいらっしゃいますよね。

「映画なんて、結局作り物じゃん‼︎」
「いやいや、たかが映画、されど映画‼︎」

映画を見る尺度も、人それぞれ。

というより、今までお互いそうやって映画を見てきていたのだと、今更ながらに気付きました(笑)。





「風の谷のナウシカ」は、今までに多分3、4回は見ています。
とは言え、好きだから繰り返し見ていた訳ではなく、作品を好きになろうと努力しながら見返していました。

最初に見たのは、テレビ放送だったかな。
でも最初から最後まで通して見ずに、途中で止めた記憶があります。
次が「魔女の宅急便」を見た後だったかな。高校生の時で、それまでジブリを知らなかったから、魔女宅を見てから、ジブリにハマったのがきっかけです。
その後が「もののけ姫」を観た後。
あともう一回ぐらい、何かの時に見た記憶があります。

機会があるごとに挑戦し、どうしても好きになれなかったのが、「風の谷のナウシカ」です。


劇場公開時僕は小学生で、その頃はまだ映画を見なかったけど、それでもテレビのコマーシャルなどで見て、名前は鮮烈に残っていたし、何よりも主題歌が頭から離れませんでした。
(この年の前後に「ゴーストバスターズ」や「里見八犬伝」「ネバーエンディング・ストーリー」「グレムリン」など、テレビCMが印象的な作品が多かったです。)

僕が高校生時代に大好きだった某アイドルは、
「アニメを実写化するなら、ナウシカを演じてみたい」と公言する程だったので、余計に僕の脳裏に焼きつきました。


何度も挑戦し、それでも好きになれなかった理由は、王蟲に尽きます。虫達のフォルムです。

僕は小さい時から虫が大嫌いだったので、あんなのが巨大な姿で襲ってきたら、と考えたら、どうしても好きになれませんでした。



今年2020年、映画館は静まり返りました。
TENETで息を吹き返している感はありますが、
それより前に映画館を盛り上げたのが

「一生に一度、映画館でジブリを」

他にもリバイバル上映された名作、傑作が多くありましたが、話題性ではジブリが群を抜いていた気がします。
「もののけ姫」をもう一度、大スクリーンで観たかったけど、不要な外出を避けていた為、今回は我慢しなければなりませんでした。
そして「もののけ姫」と同じくらい惹かれたプログラムが「風の谷のナウシカ」でした。

もしかしたら、スクリーンで観たら、違う印象を持つかも知れない、そんな期待がありました。
結局、劇場には行けませんでしたが、この機会にDVDを借りて、もう一度見てみようと思いました。

今度こそ、何か新しい発見があるかも知れない。
何か得られるものがあるかも知れない。
今までもそうだったけど、ナウシカを見る時は
僕はどうしても気負ってしまいます。


今回、そんな気負いは必要ありませんでした。

何故って、最初から楽しかったからです。
映像に釘付けになって、最後まで夢中になって見れたからです。
自分でもびっくりしました。
勿論、大人になって、虫に対する嫌悪感がなくなってきたから、というのも、理由にはありますけど。

こんなに躍動感のある作品だったとは。 


ストーリーについては、もう語り尽くされているでしょうから、割愛します。


風の谷にトルメキアの輸送機が墜落し、張りついていた羽蟲をどうにかしないとと、村の民達が考えあぐねていると、蟲ぶえを使ってナウシカは羽蟲を森に帰そうと試みる。

蟲ぶえを空中に放り投げる。
釣られて羽蟲が飛び立っていく。
後を追うようにメーヴェで空に舞い上がり、蟲ぶえをキャッチして、羽蟲を誘導するナウシカ。

僕はこのシーンに、胸が踊ったのです。
何だろう、このワクワク感。

ファンタジーでもあり、冒険譚でもある。



これは、僕が個人的に思ったことなのですが。

ユパ様が風の谷を訪れるシーンに。
散り散りになるナウシカと城オジ達の姿に。
怒れる王蟲の暴走シーンに。
青き衣を纏いし勇者の伝説に。

僕はある映画を思い出しました。
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズです。

ユパ様のシーンは、そのままガンダルフがホビット庄を訪れるシーンとダブったし、
仲間が離れ離れになるのは、正しく旅の仲間が辿った道程。
怒れる王蟲は、エント族のそれを思い出しました。
勇者の伝説は、激しい戦いを率いた後に、ゴンドールの王となったアラゴルン(勇者)の姿を髣髴とさせます。

宮崎監督はもしかしたら、「指輪物語」を読まれていたのではないでしょうか。
全ての冒険ファンタジーの始まりとも言える「指輪物語」に、宮崎監督も少なからず影響を受けていた気がします。


ちょっと飛躍し過ぎですが、そうでも考えないと、今回最初からナウシカを楽しめた理由が僕には説明がつきません。

テーマもそうなんですけど、それ以前にナウシカは、しっかりとしたエンターテインメントだったのだと、初めて気がつきました。

よく比べられるのが、「もののけ姫」ですよね。
確かにどちらも、自然を人間の力と文明で支配しようとする愚かさと傲慢さが描かれているし、クシャナとエボシ御前はまるで生き写しですよね。考え方はどうあれ、二人とも人を惹きつけるカリスマ性があります。


作品の好き嫌いは別として、僕は最初にナウシカを見た時から、ユパ様とクロトアだけは大好きでして。
ユパ様、かっこいいじゃないですか。憧れてしまいますね。
キャラクター設定見ると、何と僕と同い年⁉️
ひぇ〜、あんなカッコいい人が同い年…。
やり切れないわぁ。

クロトアは、やはりあの日和見主義というか、腹の底の考え方をなかなか見せないずる賢さが、人間臭くて僕は好きなんです。

また、何度見ても異様なのが、巨神兵です。その破壊力を発揮するも、結局人間の思い通りにはなりません。
その不完全な姿も含めて、強烈なインパクトです。
エヴァンゲリオンの庵野秀明監督が、巨神兵の作画に参加されていたのは、今では有名な話です。


それから、忘れてならない、久石譲氏のスコアですよね。
最初は、細野晴臣氏が音楽を担当する予定でしたが(それも凄い‼︎)、映画に先駆けて制作された久石氏のイメージアルバムを、監督が大変気に入って、そのまま映画音楽に起用されたとのこと。
そこから、宮崎アニメと久石氏の関係は続いていくんですね。
イメージアルバムの制作も引き継がれていきます。

細野氏のスコアも聞いてみたかった気はしますけど、やっぱりジブリには久石氏の劇伴です。
作品中には使われませんでしたが、安田成美さんの歌う「風の谷のナウシカ」は、細野氏の作品です。
作品のイメージとは、確かにちょっと離れてますけどね…。



今回は、作品ごと改めてその魅力に気付かされ、あぁ、見返して良かったなぁと、素直に思いました。
これは原作漫画を読んだ後、改めて見返したいです。
次に見る時は、もう気負わなくていいですしね。
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