Ryo

ザ・キラーのRyoのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
5.0
良い映画!

ストーリーは奥さんへの復讐を淡々とこなしていく一人称ハードボイルド作。

ネクストボンドとも噂されているマイケル・ファスベンダーが見事に役に合っていますね。どちらかと言うと遅筋優位の細身体型だから復讐劇が様になります。

本作では、主人公がなぜ殺し屋をしているのか?家族や生い立ちについて語られることは一切ありません。

この事については、本作のディレクターを務めるデビッド・フィンチャーは劇中で流れるザ・スミスと関係があることを語っています。

「ザ・スミスほど、皮肉さとウィットを兼ね備えた曲はないと思う。観客は主人公の素性がよく分からない。彼の選曲する音楽が、彼を知る窓口になれば面白いと思ったんだ」とのこと。

その意味では「ベイビードライバー」の主人公と多少ダブりますね。

冒頭の場面で流れる"Well I Wonder "という曲は、誰かとのつながり、誰かが自分に注意を向けてくれることを切望している曲です。この事からどこか孤独感を抱えて生きてきたバッググラウンドがあるのかと思われます。

また、主人公が首の骨をバキッと鳴らす場面が二度あるのですが、最初は上からの命令によるもので、二度目は復讐の場面。

首を鳴らす心理にはブレイクタイムや牽制の意味があります。主人公は殺し屋という職業に対して機械的で喜びはない、しかし頼まれる事に対して少しの安心感を感じていたのかと個人的に推察しました。

そもそも殺し屋の復讐劇っていうのはザ矛盾なんですけど、それでも人々に受けるのはアクションが凄まじいからでしょう。

特に本作はフレームにちゃんと入って、アクション酔いがない。一つ一つの動作に理解が追いつくから全体的に綺麗。緻密で大胆。さすがフィンチャーさん👍🏾
Ryo

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