Ryo

ファーゴのRyoのネタバレレビュー・内容・結末

ファーゴ(1996年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ノースダコタ州・ファーゴに住むカーディーラーのジェリーは多額の借金返済のため、前科者のカールとゲアに妻・ジーンを偽装誘拐させて義父・ウェイドから身代金を騙し取ろうと思い付く。

しかし、2人は手際良く計画を進められず、次々と殺人事件を発生してしまい・・・。といったストーリー。

ブラックコメディだから基本悲劇はあるんだけど、それが面白い。合計7人死んじゃうんだけど(警察官、カール、ジーン、目撃者2人、ウェイド、駐車場の係員)最初の酒瓶並べているシーンで7本あったから、それが伏線だったんだろうなと思った。

息子のスコティは死んでいないけど、妻もジーンだから酒に掛けているだろうし。

冒頭からの掴みも斬新。THIS IS A TRUE STORYっていう。『グッドフェローズ』とかノンフィクションものの冒頭に必ずといっていいほど出る、事実に基づいてますの引用なんだけど、まぁそんな訳はないと。

つまりそういう差し込みがあることで観客に一定の緊張感を与える魔法として機能するということだろう。グッと入り込めるからね。観客側もこれが事実ではないなんて物語を観ていたら理解できる。

「そんな訳ないだろ」っていうツッコミの感情を引き出すことで観客もある種映画に加わるような仕組みになっているし、それが狙いだろう。

本作は対比も物語を支える重要な要素で1つ目の対比は、前科者の二人。『ホームアローン』みたいによくある凸凹コンビの二人なんだけど、小っちゃい方のカールは見た目通り弱そう、デカい方のゲアは見た目も強そう。SEXの時もカールは騎乗位なんだけど、ゲアは正常位、この辺の分かれ方が面白いなと思った。

2つ目は、主人公の臨月も近い妊婦の女性署長マージの朝食のシーン。画面縦半分で夫婦の違う行動を見せている。構図としてはシンプルなんだけど、確かなメッセージを感じるカットではないだろうか。

3つ目は、SEX後のテレビをみるカール達とマージ夫婦の対比。テレビの青い光に照らされている状態が酷似している。

ストーリー的にもエッジが効いていて、観るものを置いていかない作品ではある。偽装誘拐させて、妻のジーンが死んだら元も子もないというアイロニー。そんなジェリーも結局逮捕されるというカタストロフィー。ミネソタ・ナイスを存分にいじったsatire。

コーエン監督はブラックコメディとして思う存分やりたいことが出来たんじゃないかなと思う。

この街自体が変人しかいない。それは主人公のマージでさえも。臨月中にハンバーガーを毎日のように食べたり、それでいてマイクと食事を共にする時に「ダイエットコークを」とか舐めてるのかっていう笑

その変人達の中でも善と悪があるということが大きなテーマなんだろう。

笑いは緊張と緩和ってよくいうけど、最後にマージがゲラに殺される可能性もあった。結局死ななかったけど、それはある種の緊張と緩和の表現でもある。そこに笑いはないんだけど、憂慮を吹っ飛ばしてくれた。Relief Theory of Humorを笑いなしに表現したものだと思う。

一つ気になったのが、警察署の名前もブレーナードであるからタイトルもそれで良いのではと思った。調べてみたらコーエン監督はインタビューで「ファーゴの方がより刺激的なタイトルに見えたんだ」と語っていた。確かにスペイン語チックでミネソタ感は感じられる。

まとめ、ドラマはシーズン2が好き。
Ryo

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