Ryo

ミツバチのささやきのRyoのネタバレレビュー・内容・結末

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

個人的推論を書いていきたいと思います。ざっくり話をまとめると、舞台は1940年頃のスペインに実在するオユエロス村。

『フランケンシュタイン』の映画を観て以来、精霊の存在を信じる幼い少女アナは姉のイザベルから村はずれの井戸のある廃屋に精霊がいると聞かされる。ある日、その家を訪れると脱走兵と邂逅し...。みたいな内容です。

50年以上前の映画ということで、白黒ではないんだけど時代を感じますね。通貨がペセタとかの時代ですからね。

テーマとしては、当時のスペインは今でいう北朝鮮とかベラルーシみたいな国で、デスポティズムとか内戦がある状況。その社会情勢を少女のアナの目線からそれとなく写し、描きたかったということでしょう。

全てはイザベルの嘘から始まっていて、「怪物は精霊だから目には見えないが友達になればいつでも話ができるのだ」みたいな浅慮なことを言い、アナは純粋だからそれを真に受けてしまう。

ここら辺は真偽を見極めていきなきゃいけない的なことを伝えたかったのかなと。

フェルナンド一家の自宅のドアガラスは蜂の巣をモチーフにした感じなんですが、蜂の巣というのはどこかに寄生しなければできない訳であって、自宅が一番安全ではあるんだけど、ここにいる限りは独裁状況のあるこの国にしがみついていくしかない、逃れられないんだよっていうメッセージなのかなと個人的には読み取りました。

その蜂を蒸気とかを使い自分たちで育てているんだから、おいおいって話なんだけど。

毒キノコを見て、フェルナンドが「本物の悪魔だ」みたいなことを吐いて踏み潰すシーンも原爆の暗喩な感じもしますね。

フランコの政権下では、第二次世界大戦後に核兵器の開発が進み、60年代にはアメリカの核がスペインに配備されることが合意され、国民から当然批判も挙がっていたようです。

父親だけにメタファーを託したのかと思いきや、母親もピアノでオロンゴという31年に発表されたフラメンコの曲を弾くんだけど、フランコ体制が39年〜なので、以前に戻りたいという暗示なんですかねと。

靴ひもや血のシーンも目立つカットで捉えているので、規律とか戦争にスポットを当てたかったのだと感じる。

兵士にハニトーをあげるのは、一般食材のパンに蜂蜜をかけることで、豊さを表現。りんごは安直に罪。

コートとオルゴール付きの懐中時計だけ、残されていたんだけど、まぁコートは覆うもの、懐中時計はWatchと違って巻かないので、時間が見えないということで、この覆った時間を返してほしいみたいなことなのかなと推察しました。

なので、基本は今思いましたけど笑、フランケンになぞらえている部分が多い。孤独や疎外感みたいな意味で。

フィルムを通して感情移入したアナのフィルターから見る世界を、我々がフィルムを通して見るという。アナは若い成虫だからたくさん動かないといけないし。

で、アナの演技が妙にリアリティがあったのが監督のインタビューから理解できました。エリセのインタビューで「実際のイザベルはアナより半年年上で、すでに映画は虚構と知っていた。アナはまだ現実との区別がつかず、映画は本当だと信じていた。これはアナ・トレント自身の成長のドキュメンタリー映画とも言えるでしょう」と語っている。

演技人なのに、そこを理解していない矛盾にパラレル感があって面白い。

まとめ、独裁終わってよかった!
Ryo

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