明石です

ザ・キラーの明石ですのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
4.3
暗殺の任務に失敗した殺し屋が、組織に、見せしめとして妻を拷問され、復讐の鬼と化す話。デビッド·フィンチャーの(2024年時点での)最新作。

ジャケットの雰囲気から何の根拠もなくライアン·ゴスリング主演だと思っていて、開巻早々マイケル·ファスペンダーだとわかり、まあ喋り方のアクセント以外だいたい同じだよなあと(失礼にも)思っていたら全然違った。一人芝居をやらせるとピカイチなんですねこの人。

物語の基本構造はボーンシリーズのフィンチャー版リメイクといった感じ。任務に失敗した殺しのエキスパートが、愛する人を傷つけられ復讐を誓うというストーリーの根幹はもちろん、無敵の知性と体術に、無数の銀行口座とIDカードはまさにジェイソン·ボーン笑。冒頭でパリを舞台にピーヒャラピーヒャラ鳴るあの変てこな音のパトカーに追われながらスクーターで街を駆け階段を乗り降りるシーンなんかは意図して『ボーン·アイデンティティ』にオマージュを捧げてる感がある。

もちろん、ボーンシリーズへのオマージュなだけあって、組織の人間を相手どった肉弾戦は凄まじい迫力。本当は慣れてないのに画面がぐらぐら揺れてるように見える。また主人公が殴られ、一瞬聴覚がおかしくなるシーンでは音が微妙に変化したりするのも、超完璧主義者フィンチャーならではの心憎い演出かも。私はアクション映画に詳しくないのでよくわからないのだけど、こういう本物の肉弾戦のシーンってどうやって撮ってるんだろう。一昔前の映画なら(たとえアクションでも)この100分の1の迫力も出せなかったはず、ハリウッド映画の進歩は凄い笑。

あと、Amazonで鍵のコピー器みたいなのを買って宅配ボックスで受け取り、即席で解錠キットを作りビルに忍び込んだりする微妙とか細部がめちゃ現代的でした。おそらくはフィンチャーの趣味なのだろうけど、4,50年代のノワール映画をあからさまに意識したジャケットはやや詐欺かもしれない笑。
明石です

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