よくわからなかった、というのが正直なところ。対話を重ねながらも移動を続ける態度にアメリカ然としたものを感じたが、はたして……。

【詳述は、『アメリカ合衆国ハーラン郡』欄で】映画史上最大作家の1人にも数えられる偉大な夫と、対等以上の共作者·表現者·生活者だったジェーン、余計な構えなく、スッキリ抜きだすと、その広大で境界のない世界が浮き上がってきて、圧倒される。元夫との共作では性器と自然·日常が並列化され、戦術化が独特だった。

50年代後半からスタン・ブラッケージのパートナーだったジェーン・ブラッケージとの対話を記録したハマーの短編ドキュメンタリー。ジェーンは異性愛者かつ主婦というレズビアンのハマーとは異なる思想を持った女性であるが、決して対立したりする様子が描かれるのではなくハマーがジェーンに対して敬意を向けた対話の様子がなされているのが印象的。ただ画と音を同期させないドキュメンタリー演出を実践してはいるものの、戦後日本の独立系ドキュメンタリー映画のほうがその手法を取り入れた記録の仕方としては遥かに素晴らしいと言わざるを得ない。ハマーはフィルムの長さも関係するとは思うものの、最初から最後まで矢継ぎ早に短いカットを次々と入れ変えてしまい、ジェーンの思考（ジェーンが見ているもの）について捉え損ね続けているように感じる。