ryosuke

バニシング・ポイント 4Kデジタルリマスター版のryosukeのレビュー・感想・評価

3.6
 オープニング、言葉もなく淡々とショットが積み重ねられ、車道上で指示を出す男に従って、ショベルカーがその金属部分を地面に落とす乾いた音が2回連続し、その隙間に男が収まる。ここで、おっいいんじゃないかという予感が高まる(しかし残念ながら......)。続いて、謎の逃走車両がその隙間から見え、重機はバリケードであったことが明確になる。良さそうなオープニングではあったのだが、そして、アクションを多めにしてくれるのは本来嬉しいのだが、その後は、あまりに何の脈絡もなく延々カーチェイスをやっているので流石に飽きてしまった。まあバカ映画の範疇だな。
 何故走るのかすらよく分からないまま延々続いていく逃走劇を、これまた謎の理由で補佐するラジオDJ(警察無線があっさり盗聴されている!)と主人公を応援する人々。とにかく理由はないが反権力、反体制の熱だけは渦巻いているという奇妙な味わいは時代精神の反映なのだろうか。黒人熱血DJが理由もなく?白人集団に襲撃を受けたり、主人公に雰囲気反戦バックボーンがあるっぽかったりといった細部がそれを補強するのだが、だから何なんだろうか。
 ムーディーな音楽がかかる中で海に消えていく恋人とかあまりにもアホらしい。死んだ恋人の影を見てしまうということなんだとは思うが、ガソリンスタンドの店員にせよ、全裸でバイクに跨る謎の女(何なんだ......)にせよ、行く先々で金髪美女が登場してくるのも実に馬鹿らしい。毒蛇が解放されるローアングルスローモーション......。車上にバイクを横倒しにしてパトランプに見せるトンチキなアイデアは良かった。
 ラストシーン、冒頭部とどのように接続してくれるのかということだけに微かに関心が残るところ、この処理も良かった。直前を大胆に省くことで覚悟の時間をくれない間が素晴らしい。バニシング・ポイントの一歩手前でふと微笑んだ主人公は何を思っていたのか。
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