ぶみ

サイド バイ サイド 隣にいる人のぶみのネタバレレビュー・内容・結末

1.5

このレビューはネタバレを含みます

あなたは彼に出会い、彼を知り、彼を想う。

伊藤ちひろ監督、脚本、坂口健太郎主演によるスピリチュアル・ホラー。
目の前に存在しない「誰かの想い」が見える主人公の姿を描く。
主人公となる青年、未山を坂口、恋人で看護師の詩織を市川実日子、その娘を磯村アメリ、未山の元恋人を齋藤飛鳥、未山の後輩を浅香航大が演じているほか、出演時間は短いものの、茅島成美、不破万作、津田寛治、井口理等が登場。
物語は、「誰かの想い」が見えるとされる未山の日常と、元恋人と出会ったことで変化していく様を中心に展開していくのだが、これがさっぱりわからない。
いや、わからないの一言で括るのは語弊があり、一つ一つのシーンは何をやっているのか理解できるものの、それが、どう繋がっていて、なぜそうなったのか、何を意味しているのかが、行間が空きすぎて、完全に観る側に委ねられてしまっている。
台詞も極力削ぎ落とされ、映像として映っている決して多くない情報から、かなりのことを脳で補完する必要が出てきてしまっているのだが、その補完する量や質は様々であり、結局、人によって見えてきている景色が違いすぎるため、ここまでのことを観客にさせるのは、あまりにも乱暴すぎではなかろうか。
坂口演じる未山のどこか浮世離れしている仕草や喋り方、所作は掴みどころがなく、本作品の主人公役としてはピッタリである反面、主な登場人物の人間としての温度差がかなりあることから、バランスも悪く、とりわけ浅香演じる後輩のエピソードは、もはや意味不明。
そこに、未山自身が怪しげな霊的カウンセラーの講習会に行くというシーンが挿入されたり、はたまたアパートなのか祠なのかわからないような居所も登場と、あちこちにぶっ飛び過ぎており、緩やかな映像や、ゆっくりとした時の流れとは対照的。
監督の頭の中で浮かんできたものを、そっくりそのまま映像化しているだけで、本作品で何かを伝えようとする気概が微塵も感じられないながらも、このような作品があっても良いとは思う反面、知名度の高い俳優を起用して全国区のシネコンで上映するには、かなり厳しい内容であり、それが罷り通るような映画界だとするならば、それこそがホラーであると思う珍作。

難しいのは、思い出せないから。
ぶみ

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