ぶみ

終わらない週末のぶみのレビュー・感想・評価

終わらない週末(2023年製作の映画)
3.5
週末が、始まる?

ルマーン・アラムが上梓した同名小説を、サム・エスメイル監督、ジュリア・ロバーツ、マハーシャラ・アリ、イーサン・ホーク、マイハラ等の共演により映像化したスリラー。
のんびりと週末を過ごそうと豪華な別荘をレンタルした家族と、そこに現れたオーナー家族が直面する不穏な出来事を描く。
原作は未読。
主人公となるサンドフォード一家の父・クレイをホーク、母・アマンダをロバーツ、息子・アーチーをチャーリー・エヴァンス、娘・ローズをファラ・マッケンジー、別荘のオーナー親子をアリとマイハラが演じているほか、近所に住む男・ダニーとしてケヴィン・ベーコンが登場と、非常に魅力的なキャストが勢揃い。
物語は、別荘に到着した早々タブレットがネットに繋がらず、テレビも映らない等の事態が発生、訪れたビーチでは、オイルタンカーがGPSの故障により突っ込んでくるという大事故を目撃、その日の夜にはオーナー親子が突然現れ、ともに過ごす展開となるのだが、一部別荘から出るシーンがあるものの、ほぼこの六人での会話劇というスタイルで進行するため、ワンシチュエーションものと言っても過言ではなく、別荘、曲線、ノイズ、洪水、最終回と章立てされているのも面白いところ。
その後も、ドローンから赤い紙がばら撒かれたり、浜辺では飛行機の墜落現場があったりと、次々に不穏な出来事が発生するため、観ている側を、一体何が起きているのだろうという不安定な空中ブランコ状態に誘うことになるとともに、それに拍車をかけるように、別荘の内外を壁や窓ガラスを突き抜けて自由自在にシームレスで動きまわるカメラワークが特徴的。
何より、登場シーンは少なく、いつもほどベーコンがベーコンしてるわけではないものの、隣人・ダニーを演じたベーコンの存在感たるや抜群の一言。
クルマ好きの視点からすると、自動運転技術を標榜する大量の白いテスラが次から次へと事故を起こすシーンが圧巻であると同時に、何とも皮肉な意味が込められていたのではないかと感じられたところ。
そうして辿り着いた結末は、スパッと終わるわけではないが、まさに現代社会に潜む脆弱性と未知なるものに対する不安感を示した末路であり、それを豪華なキャストと、パニック作品か、はたまたディストピアものかのような演出で終始飽きさせずに見せてくれており、製作総指揮にオバマ夫妻の名があったことに驚くとともに、以前、オル・パーカー監督『チケット・トゥ・パラダイス』の時にも感じたのだが、ロバーツがやっぱり高見沢俊彦に似ていることを確信した一作。

身銭を切ってるのに、学ぼうとしない人が一番恐ろしい。
ぶみ

ぶみ