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終わらない週末のAZのネタバレレビュー・内容・結末

終わらない週末(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

社会風刺的な作品。

異常事態とともに見知らぬ人間の存在により、物事を複雑に捉えてしまう構図が面白い。日常に起きた異変によって世界の見え方に変化が現れる。そしてあらゆるものを怪しく捉えてしまう。

その異変と関係があるものもあるが、全く関係ないものもある。結局小さな小屋はこの出来事と全く関係のないものだったし、ダニーの行動もいつもと変わらないものだった。

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カメラワークが良く、斬新さと古典的な手法がミックスされ、独特の雰囲気があった。似た雰囲気の作風だとジョーダン・ピールやM・ナイト・シャマランなど。

特にシャマランの『ハプニング』のような得体の知れない何かがじわじわと日常を侵食してくる感じが似ている。ただ、今作の場合明確な原因がある。だが、それを得体の知れない何かといった不気味なものとしてうまく表現されていた。

特に印象的なのは大きなドローンが赤いビラをばら撒きながら近づいてくるシーン。その姿は遠くから見ると何か毒を撒き散らしているように見えるのが面白い。

セリフの一つ一つが印象的で意味深。今何が起きているかだけでなく、今何をこの人たちは考えているのか?と個人の感情にまで興味が湧く。

登場人物は少ない。それが逆によく、ベテラン俳優達の演技がより引き立っていた。

何か異変が起きた時に、見知らぬ人が突然現れるだけで怪しく見えてしまう。そのような人間の心理の部分をうまく活かした演出。しまわれた銃、動物の行動、抜け落ちる歯、スペイン語を話す女性、アラビア語のビラ…。異常な状況によって、よりわからないものに対し不安や恐怖を感じてしまう人間の心理。心のどこかではすでに理解しているけれど、理解しないようにしようとしてしまう、現実から目を背けてしまう姿も描かれていた。

とてもシンプルな話なのだが、個々の登場人物の性格やセリフ、ちょっとした出来事がストーリーを不気味にさせる。つまりミスリードポイントがたくさんある。だがそれが大袈裟ではなく何か違和感がある程度なのが良い。

なんとかなるという楽観的な考えと、なんとかしないとという危機感が心を揺さぶる。娘が話す神様の話は、今何をすべきかを直球で投げかける。

個人が抱える問題と世界が抱える問題とが絡み合う感じが良い。身近な問題は世界の問題と地続きになっている。娘が「フレンズ」の最終回をずっと見れずにいるのも印象的。それに対し「存在しなかった時代を懐かしむ感じ」と見下す少女。つまり空想の世界に浸るのではなく現実を見ろと。

それが最終的に閉ざされた世界(核シェルター)に繋がっていく構図が皮肉が効いていて見事だった。その空間はまるで空想の世界のように見えた。

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ストーリーをしっかり終わらせて欲しい人には向いていない作品だろう。賛否のある作品だが、個人的にはかなり好みの作品だった。

サイバー攻撃を何か不気味なもの、毒のようなものが感染していくように表現されていたのが面白く、カメラワークやBGMによって最後まで惹きつけられる作品だった。
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