最近私が求めているものは完璧じゃない、むしろ全体から見たらちょっと困った感じのピーキーな中年女が主役の映画なので、そのど真ん中をいくナイアドのことが大好きになった。キューバフロリダ間を泳いで渡ろうと思って実際やり遂げちゃうナイアドは確かに超人なんだが、手綱持ってくれるボニーや仲間たちがいないとその能力をフルに発揮できない不完全さもあるし、同時にそんな優れた仲間たちを掴むだけの魅力も携えている。
何よりこれが実話ベースだということに勇気づけられる。サメあり毒クラゲありと危険だらけの外洋を身一つで160km丸2日間泳ぐという異常なまでにマゾヒスティックな挑戦。しかも28歳で一度破れているのに60歳を超えて再挑戦するという執念。「誰にも負けたくない」「優れた人でいたい」という動機で周りを巻き込みながら我が道を独走するナイアド。こんな優越コンプレックスの塊みたいな女を私は初めて映画で見たかもしれない。だって描かれてこなかったんだもん。（男であれば死ぬほど見てきたが）
ナイアドとボニーの関係性もとても良かった。レズビアン二人であっても当たり前にそこに友情はあるし、関係性の名称に拘らず「あなたの最後を看取りたい」と言えることより素晴らしいことがこの世にあるかよ。恋愛にない人間二人の愛が超好きなので、ラストボロボロになったナイアドを抱きしめるボニーのハグでちょっぴり泣いてしまった。
ということで今後もこういうハチャメチャな女の伝記映画をもっと作ってくれ〜！最初の一歩としてこんなに素晴らしい作品が生まれたんだから！
