じょうパン

コット、はじまりの夏のじょうパンのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
4.6
めちゃくちゃ良かった作品でした。
ほぼ一定の雰囲気で物語が進んでいて、盛り上がりとかはラストしかなかったけど、そんな盛り上がりがなくても観ていて心地よかった映画でした。
邦題は前向きな由来だったので個人的にはアリかなと思いました。

◻️脚本
予告とかで観た通りの感じで、コットという1人の少女が成長するという本当にシンプルな内容でした。シンプルな物語の中でコットの家族の複雑さだったり、キンセラ夫婦の過去だったり、近所のお婆さんなどの付き合いなどで主人公が大人だったら大人同士の会話でなんとなく勘づいてしまうところ、子供であるコットの視点で描かれているので非常に子供の不安や疑問を物語の中にきちんと描かれていて子供に戻ったような感覚で観れて楽しかったです。
ラストは予告で観ていたので走ることは分かっていましたが「走れ!コット!」と思わず胸の中で叫ぶくらい熱くなりました。コットがショーンに抱きついて「パパ」と2回言ったのは1回目は実の父に対して言っていて2回目はショーンに対して言っているんだなと個人的に解釈しました。
お父さんも嫌な人やけど、ラストでコットを追いかけるというか様子を見にきたのかその行動が、コットの事を気にしていないと付いて来ないと思うので嫌な人やけど100%は嫌いになれないキャラで上手いなぁと思わせられました。

◻️演出
これでもかというくらい本当に演出が良かった。とくにセリフではなく行動で演出しているのが凄く良かった。説明セリフ的なのがあったとしてもストレートに言うのではなくアバウトに言う言い換え的なセリフだったのでそれも良かった。

良いなと思った演出
・ショーンのビスケットを置く動き
・テレビで代々受け継いでいる編み物のインタビューみたいなものが放送されている
・ラジオで新学期の話
・コットがモップを持ってきて牧場を勝手に掃除し始めてショーンが見るだけでセリフが一切ないシーン
・ショーンがコットを走らせるシーンとラストのコット自身が自分で走り出すシーンと対比されている
・浜辺でショーンがコットに子馬が息を吹き返す話しが、コット自身と比喩させている
・ショーンが大量にお小遣いを渡す動き
・画面回からセリフが聞こえてくる
・コットの家は暗く、キンセラ夫婦の家は明るい

思い出すだけでこれだけの演出がされていて、本当に演出が良かった映画でもありました。

◻️映像
演出と同様、映像も良かったです。とにかく美しい、全てのカットに無駄がなくて観客に何を見せたくて何を伝えたいのかが伝わってきました。当たり前ですが全てコットの目線の位置にカメラがあり、目線の部分に大人のお腹がきていて、子供から見た大人の怖さというかそう言うものが映像として描かれていて良かったです。
またラストのコットが走ってきてショーンと抱き合っている時にアイリンが泣いている後ろ姿の1カットが本当に良かった。
スターンダードサイズにしたのはまだ自分の周囲の世界を理解していない、視野もまだ広がっていない少女の視点を提示したかったからだそうです。めちゃくちゃ納得できました。

◻️まとめ
何回でも言いますが本当に観て良かった。ラストは映画館で鼻を啜る音とか、涙ぐむ声が聞こえて映画館全体で一体感のようなものを感じれて映画館で観て良かったと感じました。
全人類に観てほしい作品です!

2024 22本目
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