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コット、はじまりの夏のkabcatのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
4.0
何よりもまず映像が美しい。すがすがしい空気とあざやかな緑の映える田園の風景、そして一目見るだけで貧しさと愛情の薄さを感じさせるコットの家や慎ましいながらも穏やかで満ち足りたキンセラ家の室内など光と影を効果的に駆使した撮影が見事で眺めているだけで楽しい。

家族から十分に相手にされない少女が夏休みに親戚の家に預けられてはじめてあたたかく接され、徐々に心を開いていくというストーリーじたいはよくある物語だが、日常的な暮らしを送っていくなかで、言葉ではなくちょっとした仕草や表情で変化を描く過程がすばらしい。とりわけ無骨なショーンとのやりとり(お菓子のくだりが泣ける‥)が印象的で、最後のコットのセリフを含め、父と娘の物語が中心に据えられていることがわかる。結末はコットも観客も望まない(よね?)ものだが、鑑賞後はしみじみとした気分になる作品である。

コット役のキャサリン・クリンチは演技をするのが初めてだそうだが、コットその人になりきったかのように静かで繊細に演じていた。キンセラ夫妻役の2人もとても味わい深い演技でした。
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