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異人たちのkabcatのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.8
大林監督版はかなり昔に観たので相当忘れていたのだが、この映画を観ているうちに少しずつ思い出し、終盤の展開もなんとなくわかっていたのだけれど、結末がだいぶ変えられていた。アダムの訪れる家は実際に監督の実家だそうで、プライベート色の濃い作品になっており、ホラー味は抑えられ、人と関わること、愛することの喜びと苦しみ、悲しみの方に焦点が置かれていて、人を愛することを知ったアダムのあの選択が納得できる終わり方になっている。静かな展開はよいのだが、単調に感じられるところもあり、少しウトウトしてしまった。

この映画も80年代の音楽がフィーチャーされていて、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドやイレイジャー、ペット・ショップ・ボーイズなどゲイの人たちに人気だったグループ(監督の好みなんだろうなあ)のヒット曲が多々流れてきて、ノスタルジックな気分にさせられる。

アンドリュー・スコットはドラマ「シャーロック」のモリアーティや「フリーバッグ」の神父などこれまでも印象的なキャラクターを演じているが、今回のアダム役の抑制された演技もよかった。そして相手役のポール・メスカルは『アフターサン』のお父さんとはまた違う謎めいた人物を好演している(やっぱりこの人うまいなあ)。両親役のジェイミー・ベル(鶴太郎がこんなシブいお父さんに!)とクレア・フォイもすごくよかった。

山田太一さんが亡くなる少し前にこの映画を最後まで観られたというエピソードを聞いてじんとなりました。
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