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ベルファストのkabcatのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
3.8
『コット‥』を観たあと、アイルランドつながりでこの映画を鑑賞したが、今回は生死にかかわる危機的状況が頻発し、家庭内にも大いに問題があるというのに、根底には一定の楽観的な思想が感じられる作品であり、外見上は穏やかな『コット‥』とは正反対である。それはもちろん家族や近所仲がよく助け合いの精神が失われていないこともあるが、女の子の視点と男の子のそれという違いもあるようにも思われる。

おそらくこれは大人になった少年が現在から過去をふりかえっている物語で、過去に起きた事柄はつらい事実も含めモノクローム映像で綴られるなか、映画や演劇のシーンはカラーになり、つらい現実と幸福な非現実が対照的に描かれている。そのあたり単純といえば単純で、かつ登場人物に多くを語らせるきらいがある(それも『コット‥』と大きく違う)が、90分という短さも手伝ってテンポよく楽しく観られるのは確かだ。

キャストもよく、バディ役の少年も子供らしくて可愛らしい。またおそらく30代くらいの設定であろう両親もまだ色気を失わない若さを残した2人で、特に終盤のダンスシーンは美しい。母親役のカトリーナ・バルフの無造作なまとめ髪(ヘアメイクは日本の人)とミニスカートが素敵だった。けれどもいちばんの見ものは祖父母役のジュディ・デンチとキアラン・ハインズである。渋みを増したキアランと貫禄たっぷりのジュディのコンビは映画に重厚感を与えていて、最後のジュディのセリフには鳥肌立ちました。

ところでお葬式のシーンがパーティー仕立てになっていた(これも『コット‥』とぜんぜん違う)けど、普通にあることなのだろうか??
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