メランクさん

パスト ライブス/再会のメランクさんのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
5.0
12歳で両思いだった男女が12年後にSNSで繋がり、 Skypeで仲を深めていくのだが…

っていう展開から、まぁ再会することはわかっているし、果たしてどうおもしろくなるのかが読めなかった。
SNSって映画的な再会のドラマ性を剥奪するし、
そのあっけなさが意外というか、それやっちゃうんだという驚きがあった。

実際に今作は「あの3人ってどういう関係かしら?」という外からの問いかけから始まり、
「イニョン」というキーワードが頻繁に出てくるところなどからも、
ただそこでキャラクターたちの感情が揺れるだけでなく、
彼ら自身も関係性の特別さを意識してしまってるし、
「ドラマティック」なあり方に対する批評性を感じる作品だった。

だからこそ、自分自身の人生やしてきた恋愛とも重ねてしまう。
現代パートになり、「悪役」であるアーサーが語り出したとき、
隣にいる大切な人の過去や危うさへの恐怖心がたしかに思い出され、
そうか、こっちの話だったかー!と唸った。

ノラが作家であるからこそ客観視が不自然じゃないし、
「やっぱり私に会いに来たんだわ」のセリフからもっと意地悪な、痛々しい話になるのかと思いきや、
それでも高鳴る胸と冷静さが最後の見送りまで続く。

パキッとした映像が映し出す2人の生活と、
とにかく話し出さない、たっぷりとした間。
12歳の2人が別れる印象的なY字路の真ん中の扉が、
ラストシーンで閉ざされる、その手前にはアーサー。
疑いようもなく愛し合ってるんだけど、
泣き虫だった少女ははじめて泣く。
って書きながら泣いてる😭鮮やかすぎる😭

あのわけわからん像も自由の女神の伏線か。
デートのときも雨が降ってたか。
あーあの橋の使い方、マンハッタンの外に2度行って、アーサーと会うのはマンハッタンだったのか。
見返したら必ずいろいろ発見があるな。

もう大人だから恋人ができたらその人には過去があり、
その入っていけなさに怖さと寂しさを感じる。
だからアーサーに共感してしまうし、
アーサーのようにドアの前で待ってて
優しく抱きしめられる存在に私もなりたい。