個人的なジンクスとして予告編でタランティーノがどうのこうのと言う作品はそこまで跳ねないという自説があるのだが、この『ポライト・ソサエティ』はその時節が補強された映画でしたね。いや、まぁ別につまんないってほどではないんだけど、まぁ予告編より面白いシーンはなかったなっていう印象でした。
お話はまぁ普通に面白そうなんだけど、パキスタン系のイギリス人一家の姉妹の妹が主人公でその妹ちゃんは空手を習いながらスタントウーマンを夢見ている。画家を目指すお姉ちゃんと一緒にお互い夢を叶えることを誓い合っていたのだが、スランプ中のお姉ちゃんは画家の夢を諦めてお見合い結婚を決めてしまう。そんな! お姉ちゃんは画家になるはずなんだから結婚なんて許さない! そうだ! あのお見合い相手は悪い奴でお姉ちゃんを騙しているに違いない! と思い込んだ妹ちゃんが暴走して自慢の空手で縁談を破談にしようとする…というお話。
これがまた予告では面白そうな感じになっていて、パキスタンの婚礼用の民族衣装に身を包んだ妹ちゃんが空手主体のカンフーアクションで大立ち回りしまくりってな感じの印象を受ける感じなのだが、まぁそこまでアクションアクションした映画ではなかったですね。というかぶっちゃけアクション映画ではなかったですね。なんだろう、アクション要素もあるコメディ主体の映画という感じだろうか。結構ベタで下らないギャグを連発しながら物語の中心となるのは妹ちゃんが姉の婚約相手を悪と決めつけて暴走しまくるパートなのである。
まぁその辺が予告編のイメージとは結構かけ離れていて個人的にはガッカリ感がありましたな。何だよ特に肉弾戦とかあんまりしないじゃん、この映画、っていうガッカリ感だったのである。しかもタランティーノがどうのこうのというだけでなく、カンフー×ボリウッドみたいな謳い文句もあったのだがイギリスの映画だしパキスタン系の主人公なのにボリウッドとか言っちゃっていいのかよというのもイマイチ乗れないところであった。まぁそこは映画の内容が云々ではなくて日本の配給会社の宣伝手法が雑いなぁというところだが、しかし裏を返せば俺はその宣伝に乗せられてまんまと劇場へ足を運んだので売り方の難しい映画を観たくなるように紹介したという点では上手い宣伝でもあるのだろう。でもそれは今後似たような紹介の映画があったら警戒しちゃうからやっぱり悪手だとは思うけどさ…。
まぁそういう感じな印象の映画でしたね。悪い意味で思ってたのとは違った映画だったのでやや文句多めな感想にはなっているが、姉妹喧嘩のコメディものと思って観れば特に文句もない映画だとは思う。まぁ文句はないといってもすげぇ出来が良いと言うほどでもなく、可もなく不可もなくという感じの作品ではあるのだが。しかし観る前の印象というのはバカにはできないもので、もし本作が内容もよく分からないままでのカリコレとか未体験ゾーンの映画たちのようなイベントでの上映だったらきっと全く期待せずに観て、その結果ちょっと興奮気味に「これ面白かったよ!」という感想を言っていただろうなというところはある。映画に限らないが出会い方というのは大事なものなのだなぁ、と改めて思ってしまいましたね。
再三書いてるようにアクション要素が薄めだったのは残念だが、その分妹ちゃんの同級生たちとの三馬鹿トリオみたいなやりとりは楽しかったし、終盤執拗にある人物にストンピングを加えるお姉ちゃんとかは笑ってしまったので、やはりコメディ映画としては悪くはないのである。妹ちゃんの暴走パートを削ってもっとアクションがあれば良かったのだが、まぁそこに過度な期待さえしなければそこそこ笑えるおバカコメディという感じではあろう。
ちなみにタランティーノ要素はないとは言わないが、まぁ上っ面の雰囲気だけをなぞったという感じで特にタランティーノファンなら楽しめるということもないと思いますね。特にタランティーノが好きでもない俺でもそんな感じなので、濃いタランティーノ好きの人がそこに期待して観たら肩透かしではあろう。
その辺を了解の上で観れば、まぁ緩く楽しめるコメディではないでしょうか。