コミナミ

ビヨンド・ユートピア 脱北のコミナミのレビュー・感想・評価

4.4
開始1分で「もしかして今から凄い映画を観るのではないか…?」と感じずにはいられなかった。その予感は的中した!とにかく"凄い"映画だった…!

これを観るまでは、北朝鮮の国境を越えた瞬間に脱北は成功するんだろうと思っていた。まさか、国境を越えてからが脱北の本番だったとは!

安全な地に辿り着くために、複数の国を横断する必要があり、その道中では常に死が隣り合わせ。その過酷すぎる現実を、"再現ドラマ一切無し"のリアルな映像が緊迫感と共に描き切ったことに圧倒された。
脱北者の支援をするブローカーですら、「脱北者をお金としか見ていない」者もいるというのが驚き。そんな中で、強い信念を持つキム牧師が脱北者の希望の光すぎて眩しかった…

脱北経験者の口から語られる北朝鮮の暮らしが想像以上の厳しさと貧しさで、「生き延びるために脱北する」という言葉の重みがひしひしと伝わってきた。

そして、作品の中で密着した家族のおばあちゃんや子どもたちが、過酷な思いをして脱北に成功したにも関わらず、戸惑いの表情を見せつつも金正恩に対する崇拝を口にしたのが印象的で、北朝鮮の洗脳教育の異様さを見せつけられた。

北朝鮮という国家の異常さに言葉を失うが、この国に生まれた人間はそれに一切の疑いを持たない(生まれた瞬間からそうやって教育されているから)。
生まれた国が違っただけで同じ人間であることには変わりないと思うと、色々と考えさせられる…

パンデミックの影響も絡んでいくラスト。ドキュメンタリーだから当たり前ではあるが、この作品の中の世界が今この瞬間と地続きであることを強く実感しました。脱北家族はこれからも幸せに暮らして欲しいなぁ…

この作品に関わる全ての人の勇気に拍手を送りたいです!手に汗握る決死の脱北計画、是非観て欲しいです!
コミナミ

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