佐藤備忘録

夜明けのすべての佐藤備忘録のネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

なんか悔しいや。良い映画なんだろうな〜と思って事前に良い映画だよ〜って評判も聞いて実際観てみたら本当にめちゃくちゃ良いんだから、なんか悔しい。

心地いい感覚が心に沁み渡る。

人生を描いていた作品。ただしこの人生はきっとこの世のどこにも存在しない。そう信じたい。

嫌な人が一切出てこないんだよね。というか嫌な描写が極力脱色されてる。原作も読んでみたけど原作では二人の恋愛に周りの人が突っ込んでくるシーンも多かった(それもまた面白くはある)けど、本作ではそういう茶々は少なかった。こいつ黙ってろよ〜みたいに思うシーンが本作では全然ない。みんな良い人だしみんな良い交流の仕方してる。でも、そんな人生ってありえないでしょ。ありえなくあってほしい。じゃないと俺の人生が馬鹿みたいだ。

この監督は世界に名を馳せていくんだろうな。

「ケイコ」に引き続き16mmフィルムで撮っており、淡くざらついた温かさを湛えた仕上がりになっていて非常に好印象。

山添の上司も社長も最高や。こんな大人になりたい。

自分の持つモノと真摯に向き合って生きていってる主人公たちがかっこいい。俺だったら向き合おうともせず引きこもっちゃうだろうし、現に今そんな感じだ。

だからこそ、自分の努力不足や人生に対する不誠実さを突きつけられてる感じがして、ちょっと苦しい。「ケイコ」のときも思ったんだよな。別に「ランク」付けしたいわけではないが、特に何の障害もなく生きている俺と映画の中の主人公たちだったら、きっと彼らの方が生きづらいだろうに、彼らは自分のやるべきことに向き合って日々を生きている。そんな彼らを前にして俺は何を思えばいいんだろう。特になんの苦労も努力もせずのうのうと惰眠を貪り孤独に生きている俺は。

こんな職場で働きたいランキング堂々一位。

映画オリジナル要素で言うと放送部の子たちは映画ならではの良い手法だなと。

やっぱ下は中高生から上はおじさんおばさんまで、いろんな年齢いろんな属性いろんな人がいる方が物語としての厚みが増すよなぁ。特に今回みたいな実在しそうな「人生」を描く作品を作るにあたってはなおさら人の多様さは大事だと思う(もっともそれだけの人数のキャラをうまくまとめるのは難しいだろうけど)。

「記録」を残すってのはきっと大事なんだろう。当事者としてPMSの症状の記録を残す。副社長としてプラネタリウムに関する仕事の記録を残す。放送部として記録を残す。古代の人が天体情報を星座という記録として残す(これはさすがに苦しいか)。自分と向き合うためにも他人と向き合うためにも記録ってのは大事なんだ。フィルマークスで映画の記録を残そう。

PMS(月経前症候群)(不勉強ゆえ今回初めて知りました)を抱える藤沢(上白石萌音)とパニック障害(今回初めてどういうものか知りました)を抱える山添(松村北斗)、ままならない人生を歩んでいる二人がお互い助け合いながら、たくさんの人と支え合いながら自分なりの生き方を選んでいく話。
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