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夜明けのすべてのmikeのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.5
原作既読だったので、三宅唱監督が映画化すると知った瞬間から「絶対に良い!」という確信があった。すべての描写が上品で、すべての距離感が適切だった。ふたりの、その周りのひとたちの、原作との、観客との。
自分でコントロールできないことについて、自分以外についてはあまりに無知、というところからの理解や前進について描いた原作のエッセンスや、ヘビーな事柄をとても自然に風通し良く描く瀬尾まいこさんの作風に誠実に向き合った上に、三宅監督のメッセージが乗せられているすばらしい映画化だった。

全編を通して光の描写がすばらしかった。山添くんが自転車を走らせる陽光、夜の会社をあたためるストーブ、移動式プラネタリウムの中に広がる満天の星、はるかかなたの遠くの星から時間差で届く光、ふたりの心を映し出すかのようなトンネルの明暗、夜を過ごすすべての人々を見守るような街の灯り。そこに寄り添うHi'Specの音楽。

「他者への思いやり」「(たとえ苦手な相手であっても)助けられることはある」「明けない夜はない」「ひとはより善く変わっていける」というまっすぐすぎるメッセージが、そっと、しんしんと心に降り積もっていく。観終わった後には髪を切った後のような晴れやかさが残った。
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