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落下の解剖学のmikeのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

羅生門型ミステリを入り口にして、『マリッジ・ストーリー』の如き夫婦間の地獄、事実と想像を混ぜることの危険性、それを(たとえ脳内であっても)映像化することの暴力性、さらに「結局人間は他人の一部しか知ることができないし、それを基に主観(あるいは覚悟)でもって判断を決めるしかない」という他者との関わりにおける根本的なおそろしさにまで到達していく。観客は被害者、容疑者、法曹、障がいをもつ子ども、介助犬、果ては自分自身にまで疑いの目を向けなければならず、さらに使用する言語やピアノの旋律、人物の配置や家族の写真などのキーアイテムにも細かく気を配らなければならないため、どっと疲れる映画だった。

よくできた映画だとは思うのだけれど、個人的にはあまり好きになれなかった。緻密に配置されたキャラクター造形が単なるプロット・デバイスになってしまっている気がして…。真相究明に意味がない法廷ドラマという点で、是枝監督の『三度目の殺人』を思い出したりもした。

あとは、やはり「犬」描写が……。あの実験について、わたし法廷開廷⇒即有罪判決となってしまったため、その後は正直かなり気をそがれてしまいました。これも監督が観客の倫理観や地雷をあぶりだすための演出だと思うし、その上で登場人物の好き嫌いについて話したり「怪物だーれだ」を考えたりするのは楽しいとは思うのですが…。
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