このレビューはネタバレを含みます
シリアス穏やかドラマ。
パニック障害にPMS、家族の自殺と、扱っているテーマは重たいのだけど、ひたすら静かで暖かな作品。まさにプラネタリムを鑑賞しているような、穏やかな気持ちになりました。
主人公たちは、周りからすれば奇異な症状を抱えてて、孤独や苦悩を感じている。でも、互いの症状をちゃんと勉強して、理解しようとして、心を通わせていく。
途中、互いの症状を茶化しあうシーンがあって、少しドキリとしましたが、「言っても大丈夫」な関係性や理解が土台にあるからだと思うと、すごく良いなと思い直しました。
主人公たちの症状はあくまでメタファーであって、相手のことをちゃんと見つめて、言葉にして伝えていくことって、人間関係全般に大事なことだと思うし、相手を支えることは、このステップ抜きでは絶対にできないと思います。
余裕がない時に怒りっぽくなったり、困ると黙ってしまったり、完璧な人間なんていないけど、その弱さがその人の全てではない。弱さだって、ちゃんと工夫したら付き合っていける。当たり前だけど、これってやっぱり大切だよなと。
2人の関係が、安易な恋愛に発展しなかったのも、ポイント高いです。
また、「夜明け前は一番暗い」という言葉は初めて聞いたのですが、凄く印象的で、素敵なフレーズだと思いました。
要は、「明けない夜はない」という事なのだと思いますが、ぼくはこの言葉、そんなに好きではないのです。希望を持つのは大事だけど、なんか安易だし、無理に前を向けと言われている気がして。
でも、「夜明け前は一番暗い」って言葉は、今の辛さや苦悩にも目を向けてくれているように感じます。そこを踏まえた上で、もう少し頑張ってみようと思える気がします。
ぼくは今のところ、パニック障害のような症状は抱えていません。でも、それはたまたまであって、いつそちらに行くかは分かりません。そうじゃなくても、将来への不安とか、孤独や寂しさとか、ぼくなりに辛いものは、今だってあります。
辛いときは、この言葉を思い出したい。そして、たとえ暗闇の中だって、自分と繋がってくれる人たちのことを忘れないようにしたいと思いました。
ぼくは洋画派なんですけど、こういう細かな心の機微は、やっぱり邦画のほうが共感しやすいなと思います。食わず嫌いせずに、色々観ていこう〜。