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夜明けのすべてのcottonのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.8

周りに気を遣い続ける藤沢さんと他人に心を開かない山添くんが、互いの抱える苦しみを知ろうとするシーンが良かった。

始まりは単なる興味だったとしても、自分の弱さと向き合う繊細な2人の寄り添い方が自然で、真っ直ぐで、そこに思いがけない可笑しさも。ひとつ席を空けて隣に座っているような優しさが心地良い。

プラネタリウムを見ているかのような気分になれる亡き弟のカセットテープ、ずっと聞いていたくなる。今見ている星は500光年前の光だと何度聞いても信じられない。日曜日の職場、ストーブの灯り、自転車に乗って少しずつ広がる山添くんの世界、冬の午後の白く眩しい光、夜についてのメモ。夜明け前のあの時間は、人を静かに強くさせるような不思議な空気が漂う。

PMSやパニック障害に限らず、人それぞれの異なる苦しみを理解しようとする姿勢が温かくその優しさと想像力に助けられることがあると思う。抱えている傷や上手く付き合うしかない嫌いな自分のことを理解してくれる人がいる、ということが何よりも大きな救いになる。
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