cotton

枯れ葉のcottonのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.2
労働と世の中の暗いニュース、繰り返しの毎日と少しの希望が果てしなく私たちの生活と地続きで淡々としているのも心地良い。

どのシーンも美しい配色でありながら素朴さもあり、変に気取っていないところが素敵だった。少ない台詞から溢れる愛と皮肉とユーモアも。

気の落ちるラジオ、電話番号を書いたメモ、まさかの結婚しかけた発言にカラオケ王と呼ばれる友人、ワンコかと思いきやチャップリン。

他人に何を言われようが、ベッドも食器も1人分あれば十分で多くはいらない。でも、それを買い足してまで夕食を一緒に過ごしたい相手がいることはささやかな幸せだと思う。不要になった瞬間、食器を捨てるアンサの潔さも可笑しくて好きだったけれど。

閉店後、飲み続けて眠っているホラッパにカフェバーの店主が「もう帰って」ではなく「今夜は帰って、また明日の朝来な」という声かけだったのが優しくて印象的。度々差し込まれる工場のカットがまた良くて。

劇中で歌っている2人組が気になって仕方なかったが、実在していて嬉しかった。無表情で独特な空気感と絶妙な日本語訳の歌詞に心を掴まれる、曇り空のような穏やかさのある映画。
cotton

cotton