わがはい

夜明けのすべてのわがはいのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.7
新進気鋭の三宅唱監督が有名俳優を起用した一大出世作。
いやー、ここ数年観た邦画でぶっちぎりのベスト!

初期の三宅作品は映画モラトリアムに足を取られて置いてけぼりにされこともなくはなかったが、本作品は著名な役者を配して間口を拡げたこともあってか、三宅監督の感性と観る側の感性がバチっとハマる感じがある。

映し出されるすべての映像、台詞、配役、『夜明けのすべて』という題名のすべてに明確な意味と意図があり、しかも解釈の余地は観る側に残してくれているのだ。

役者も漏れなく素晴らしく、主演の上白石さんはもちろん、存じ上げなかった松村さんの演技にも感服しました。(若き日の江口洋介似の若手俳優と思っていたら旧ジャニーズ系と知ってびっくり)
終始名シーンだらけだが、個人的ベストは三宅作品常連の名優・渋川清彦が元部下である山添くんの成長に涙ぐむシーンかな。

本作品は三宅監督が追い求めてきたリアルと作品性が融合した最高峰であり、間違いなく時代を切り取った名画である。
しかも目にも耳にも刺激的な部分がなく心地良いにも関わらず、PMS・パニック症候群という一つテーマが観る側に緊張感を生み、一切弛緩することなくストーリーをドライブさせる様はお見事。

本作品とビクトル・エリセ『瞳をとじて』を超える作品にしばらく出会えそうにない。
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