わがはい

海がきこえるのわがはいのレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
4.4
これを観た宮崎駿が激怒し、当てつけ的に書き下ろしたのが『耳をすませば』というエピソードがあるが、裏を返せばプライドの高い宮崎駿がそれほどに脅威を感じたんだろうと思える。

舞台はまだバブルの残り香が消えていない東京と高知の田舎。
地方の高校に少し複雑な事情を抱える都会の美少女が転校してくることによってクラス内、友情の関係性に変化が生じていくエモーショナルな青春ストーリー。

里伽子の気の強さ・わがままさは物語の中でもそうであるように鼻につく人もいるだろうが、一方で男子はこういう女子にめっぽう惹かれる。
自分だけがこの娘を分かっている、守ってあげたいと勘違いする。

実際主人公である杜崎も、里伽子の大人っぽさと幼さ、気丈と弱さ、冷たさと甘えという相反する姿に振り回されながらも次第に惹かれていく。

2人は最後に再会を果たすが、個人的には最終的なパートナーにはならなかったと思っている。
きっと十代の煌めきとして大人になった2人の心の中に瞬間パッケージされて残り続けているような気がするのだ。

1993年という時代背景だからこそ作り得た、みずみずしく淡いパステルカラーのような名作だ。

最後に余談だが、シャムキャッツという今は解散してしまったバンドの『Girls at the Busstop』という曲を興味があれば聴いてみてほしい。
意識したわけではないのだろうが、本作とシンクロする儚さを纏った名曲だ。
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