このレビューはネタバレを含みます
テニスの試合の高揚感を燃料に、男2人と女1人の三角関係を描いたルカ・ヴァダニーノ監督作。
13年前にテニスの男子ペアだったパトリックとアートは、若くして天才テニスプレーヤーの名声を欲しいままにするタシと出会い、2人とも漏れなく恋に落ちる。
次の試合で勝った方が付き合うことになり、パトリックが勝利するが長続きせず、略奪する形でアートが付き合って結婚まで漕ぎ着ける。
アートのコーチとして、アートを支配し続けるタシ。
トッププレイヤーになって名声を得るも、タシの支配に限界が近いアート。
車中泊するぐらい金が無く、何とか這いあがろうとするパトリック。
全米オープンの前哨戦で2人が対決することになるが、タシにやり直せないかと近づくパトリック、わざと負けてくれと頼むタシ、それぞれの思惑が交錯する中で、2人の意地がコートの上でぶつかる。
あの日のわざと負けるモーションを見せるパトリック→タシがわざと負けてほしいと頼んだことを悟るアート→「うおー!」→昂って抱き合う2人→「これが観たかったのよぉ!」という見事なラスト10分。
スローモーションとPOVとカットの応酬が凄まじくて、タシと一緒にうおー!ってなってしまった。
これだけでも観て良かった。タメの一作だな。
この感じどこかで•••と思ったら、ヒッチコックの「見知らぬ乗客」だと思い出した。
テニスの試合で1人だけ頭が球を追ってない画って凄い印象に残るなぁ。
本作のゼンデイヤは凄いとは聞いていたけど、脂乗りまくりの彼女だからこそ納得感が出るファム・ファタールぶり。
男2人を手玉に取って、本当に観たかったテニスを実現させたある種のサイコ感は、テイストは違えど「セッション」のフレッチャーを思い出した。
あと、忘れてはいけない劇伴は我らがトレント&アティカス。
今回は電子音バキバキで、エンドロールはボーカルも披露する気合いの入りっぷりで堪能させていただきました。