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SISU/シス 不死身の男のnetfilmsのレビュー・感想・評価

SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)
3.9
 第二次世界大戦末期の1944年。ソ連の侵攻を受け、ナチス・ドイツに国土を焼き尽くされたフィンランド。凍てつく荒野を旅する老兵アアタミ・コルピ(ヨルマ・トンミラ)は戦闘機にも戦車にもまったく動じる素振りも見せない。愛犬ウッコを連れて掘り当てた億万長者となるだけの金塊を運ぶ途中、ブルーノ・ヘルドルフ中尉(アクセル・ヘニー)率いるナチスの戦車隊に遭遇。金塊と命の両方を狙われる羽目に陥る。アアタミの手元にあるのは、ツルハシ1本と折れない心(=SISU)のみ。それでも、戦場に落ちている武器と知恵をフル活用し、ナチス戦車隊に立ち向かっていく。自閉症なのかPTSDなのか彼はどういうわけか一切の言葉を発しない。それどころか機銃掃射を浴びても、地雷原に追い込まれても、縛り首にあっても、挙句の果て、戦闘機にツルハシ1本で食らいついても、絶対に死なない辺りが「ランボー発ジョン・ウィック行き」の完全な馬鹿映画なのだ。それにしてもナチス軍を相手に流石に常人離れし過ぎじゃないかと思う人も、近年のボリウッド映画を見ればある程度、中和されるのが不思議だ。

 フィンランドの監督ヤルマリ・ヘランダーの世界観は正にハリウッドの80年代直系で、ランボーやターミネーターやコマンドーのような無骨な主人公が、悪人たちに鉄槌を下す。そこに囚人(慰安婦)たちの『マッドマックス 怒りのデスロード』のようなアクションも随時盛り込む。分かり易く章立てされた物語はクエンティン・タランティーノ直系で、ヤルマリ・ヘランダーはいつかどこかで観たことのあるアクションをパッチワークして、謎にパワーのある力作を捻り出すから不思議だ。然し乍らフィンランドのラップランド地方の凍てつくような寒さが画面にこびり付き、カラー映画にも関わらず、白黒映画のような様式美すら感じさせる。おまけにあの犬も主人公役を演じたヨルマ・トンミラの愛犬のようで、時にトラウマを感じないか心配なアクションをする一方で、飼い主の姿を見つけた時の尻尾の振りが愛らしい。徹頭徹尾、単純なアイデアで進む大胆でバカな映画ながら、章立てを記録するフォントや色はやはりフィンランドのお国柄が伝わるなかなかの良作。
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