三樹夫

SISU/シス 不死身の男の三樹夫のレビュー・感想・評価

SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)
3.8
ナレーターが銀河万丈に主役は不死身の男で、こんなのボトムズじゃねーかという予告編。これで「炎のさだめ」のインストが流れていたら完璧だった。日本の配給会社はこの映画を観てピーンと来たのだろう、ボトムズを匂わせるような予告編になっている。
映画の中身はと言うと、キリコ・キュービィーの老後 in フィンランドで、異能生存体のワンマンアーミーがナチスを皆殺しにする90分。マカロニウエスタンとナチス、ランボーとマッドマックスとをコンクリートミキサーにかけてぶちまけた不死身のジジイの殺戮ショー。お前らの好きなもん全部ぶち込んでおいたぞという、面白要素たっぷりのフィンランド鍋料理みたいな映画。

地雷でナチスが吹っ飛び爆散して死ぬなどやたら景気がいい。ナチスを次々ただの肉片にしていく。死体を盾替わりのハクソー・リッジ戦法に、ガソリン浴びて自らマッチで火をつけ火だるまになって川に飛び込むエンターテイナーっぷりなど、バイオレンス方向にサービス精神が豊富。不死鳥は炎を浴びて蘇る。
主人公は西部劇でイーストウッドがよくやる名無しの男で、大きくはマカロニウエスタンとナチスとマッドマックスの要素で映画が構成されているが他の細かいところで言うと、砂金掘り用鍋を盾に前進がマーベルのキャップの戦法を思わせたり、トラックの下にへばりついているのが『ケープ・フィアー』の一番面白いシーンを思わせたりなど、色々なボンクラ要素が混ぜ込まれている。
捕虜の女性たちが砲身にナチスぶら下げ戦車にハコ乗りで生還するというバチクソかっこいいシーンは最高。

昨日の夜、全てを失くして首を吊られていた。
今日の昼、命を的にナチスを追っていた。
明日の朝、瓦礫の街に金を蒔く。
フィンランドは第二次世界大戦が作ったパンドラの箱。
質を問わなきゃ何でもある。
明後日、そんな先の事はわからない。
三樹夫

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