ぽん

ジョーンズタウン集団自殺 -偽りの死の楽園-のぽんのレビュー・感想・評価

3.8
先日鑑賞した「サクラメント 死の楽園」(2013)で描かれていた、カルト教団「人民寺院」の集団自決事件のドキュメンタリー。勢いにのって観てしまった・・・。重い。重すぎる。

夥しい数の死体の映像に、比喩表現でもなんでもなく背筋が凍って鳥肌が立った。事実はフィクションよりも凄惨。

集団自殺を主導したのは教祖ではなく、とりまきの女性幹部たちだったというのが本作の焦点。ここは自分が読んだ本(『宗教からよむアメリカ』森孝一著(1996))とはちょっと違ってた。
本作は、生き残り信者と信者の家族、教祖の息子、ルポを書いた作家のインタビューで構成されていて、そこに実際の映像や残された音声も流れ、説得力がある。人は自分の見たいようにしか物事を見ないというのはあったとしても。

社会事業を中心に活動していた人民寺院。平和と平等の社会正義を目指し、そこに癒しと救いを見た貧しいアフリカ系の人々や理想主義に燃えたリベラルな白人が集った。始めは純粋だった共同体が徐々におかしくなっていく。こういうのは人間の業なんだろうか。一般社会から隔絶された地に“楽園”を創るのは、聖化・浄化に見えて実は教団内で起きている様々な醜聞を隠すためだったと。

ドラッグ中毒で壊れていく教祖。愛人たちが教団内で権力を握って共同体を統率するのを黙認するしかなかった教祖の妻。いやいや、もう、こんなんキリスト教と違いますやん。映画でやってたように楽園にはジム・ジョーンズのお言葉がスピーカーで流れるのだけど、出エジプトのくだり、神様にめっちゃ文句言うてました。マナじゃなくてコンパスとか与えれば40年もさまようことはなかったんだ、とかなんとか。ひょへー。

なにしろ犠牲者の3分の1が子どもだったというのがヒドイ話。大人は自分の分別でやってることだからまだいいとして、子どもたちを道連れにするのは・・・。涙 
毒入りジュースを飲ませているときの音声、子どもたちの泣き叫ぶ声が、苦しくて。「にがみで泣いてるの。痛くて泣いてるんじゃない」って言ってる女性幹部の声が憎々しかった。

映画「サクラメント」の方は教団に対する眼差しが、こっちよりマイルドだったかもなーと思う。うまくエンタメに昇華させてましたね。タイ・ウエスト監督は「X エックス」(2022)も面白かったし、自分とは相性が良さそうな気がする。
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