ぽん

ロバート・アルトマンのイメージズのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

もうねー、最初っから飛ばしますよアルトマン御大。70年代のちょっと肌理の粗いフィルムの画が雰囲気満点。突如、空間を切り裂くように鳴り響く尺八が恐怖を煽る。西洋音楽と違って音階が不安定な分、不気味さが増幅する気が。この世から遊離するような不思議な音色・・・。例えば雅楽の笙(しょう)のフワァァ~ンっていうポルタメントは、魂をそこに呼ぶみたいな意味があると聞いたことがあり、それと近いものを感じる。日本人には聞き馴染みのある音色だけど、西欧の人たちはこういう音楽をどう聴くんだろか。

さて、お話の方は色々と仕掛けがあって、状況を掴むまでは分かりにくい。いや、掴んだあとも分かりにくかった。苦笑
ヒロインの人妻が精神崩壊していくお話なのですが、彼女が見ている妄想がそのまんま映像化されるので観客も混乱するという、「ファーザー」(2020)方式です。

ダンナが浮気してるよというチクリ電話から始まるけど、実は浮気してたのは彼女の方。これは認めがたい自分の汚点を他者に投影する、自我の防衛機制じゃないかと。しかも浮気相手は2人いて、あり得ない場所、あり得ない時間、いつでもどこでも出てくる・・・まぁ妄想だから仕方ない。その都度クルクルと表情を変化させるスザンナ・ヨークの電波系芝居がなかなか見もの。

彼女は自身の罪と戦っていて、もう偽りの愛にすがるのは止めて夫だけを誠実に愛したいんだと、もがいている。その葛藤と罪を悔いる思いが身を引き裂くほどで、ついには精神を病んだってことじゃないのかしらん。たぶん乖離性障害のようになって、自分がもう一人の自分を見ているという離脱状態に陥った。
彼女は童話作家で素晴らしいイマジネーションで物語を紡いでいる人なので、余計に現実世界からフワッと離脱して空想の世界にスリップしちゃう、みたいなことが起きやすかったのかも。知らんけど。

ヒロイン自身がだんだん「これは妄想ね」と理解していって、じゃあ殺しちゃってもいいわねと躊躇なく攻撃性を露わにしていく。最後はそれが悲劇を生んだってことでしょうか。

ところで、外国映画でものすごーく良く見る、車のバックミラーにつけるチャーム。ダッシュボードにくっついてることもあるかな。あれって“映画世界”の一つのイコンというか、なんらかの記号になってる気がしている。今回はシャンデリアみたいなガラス細工でユラユラ揺れまくる。不安定で壊れやすいヒロインの心の象徴だったのかな。
ぽん

ぽん