とても暗い。
20年も前の作品だけれど、
ものすごく今日的なテーマであり、
幽閉された少女が想像力に希望を見出す辺り
すずさんとも共通している。
無垢な少女が幽閉され、
ようやく外に出られたときには魔法がかけられ、
心を表す言葉を失っている。
地下牢に再び閉じ込められてもその酷さを直視せず、
解放してくれる誰かの到来を待つ。
せっかくの願いごとも、
地下牢内を塗って窓や星を描くことに費やす。
本当の不幸は幽閉されていることよりも、
その惨さに気づかず、抵抗する意味さえわからないこと。
しかしこのアリーテ姫の状況は、
世界中で起きている現実のメタファーに他ならない。
多くの人々は言葉、想像力、
自分で行動する力を剥奪され、
無力にもその場から動けずにいる。
実は自分を縛るものも決して絶対的なものではなく、
皮を剥けば軟弱な個人でしかない。
信念が呪いを打ち破り、
行動する力を与える。
という後半の展開は清々しく、
また魔法使いの正体は
ノスタルジーにしがみつくこの国の為政者に重なる。
暗いけど、おもしろかった。
やっぱり優しい片渕監督。