メランクさん

アリーテ姫のメランクさんのレビュー・感想・評価

アリーテ姫(2000年製作の映画)
5.0
とても暗い。

20年も前の作品だけれど、
ものすごく今日的なテーマであり、
幽閉された少女が想像力に希望を見出す辺り
すずさんとも共通している。

無垢な少女が幽閉され、
ようやく外に出られたときには魔法がかけられ、
心を表す言葉を失っている。
地下牢に再び閉じ込められてもその酷さを直視せず、
解放してくれる誰かの到来を待つ。
せっかくの願いごとも、
地下牢内を塗って窓や星を描くことに費やす。

本当の不幸は幽閉されていることよりも、
その惨さに気づかず、抵抗する意味さえわからないこと。

しかしこのアリーテ姫の状況は、
世界中で起きている現実のメタファーに他ならない。
多くの人々は言葉、想像力、
自分で行動する力を剥奪され、
無力にもその場から動けずにいる。

実は自分を縛るものも決して絶対的なものではなく、
皮を剥けば軟弱な個人でしかない。

信念が呪いを打ち破り、
行動する力を与える。

という後半の展開は清々しく、
また魔法使いの正体は
ノスタルジーにしがみつくこの国の為政者に重なる。

暗いけど、おもしろかった。
やっぱり優しい片渕監督。