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碁盤斬りのTSのレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
3.9
【時代劇は斬るばかりではない】83点
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監督:白石和彌
製作国:日本
ジャンル:時代劇
収録時間:129分
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 2024年劇場鑑賞13本目。
 自分の中では双璧となっている白石和彌監督と吉田恵輔監督が、同じ日に新作の公開を持ってくるというのは、かなりライバル意識があるのではと思ってしまいます笑 今作も楽しみにしていて遅れながら拝見させてもらいました。結論から言うと、十分良作ではあるのですが、良くも悪くも白石和彌監督らしくなかったので、個人的には白石監督の作品の中では平均的となりました。ただ、この作品で平均的なので、自分の中での白石監督作品のアベレージがかなり高いのだなと思わされました笑

 浪人の柳田格之進は、見覚えのない罪を被せられ、彦根藩から追放される。江戸で娘の絹と細々と過ごしていたのだが。。

 タイトルからもわかる通り、今作は囲碁を題材とした時代劇です。従って殺陣シーンは割と少なく、重くそして過激な描写に長ける白石監督の作風とは少し違いました。ただ、『孤狼の血』などの描写には一定の批判もあるようでして、そうした方からするとむしろ今作の方が映画の出来としては良かったのではないでしょうか。人物描写が丁寧であり、殺陣シーンが少ないのに息が詰まる緊迫感を醸し出すのは流石だなと思いました。自分は囲碁のルールはさっぱりなので、知っておけばもっと楽しめたのかなと思いましたが、全く知らなくても何となく囲碁の真剣勝負の空気が伝わってきます。草彅剛演じる柳田は冒頭から不思議な人物でして、囲碁の力は一級品、武道の力がどれ程のものかはあまりわかりませんが、何だか魅力のある人物に見えてしまいます。しかし、そういう人物ほど人に言えない過去を持っており、そのあたりが顕になってからは、人が変わったように復讐の念に駆られていきます。この柳田の変貌ぶりが賛否の分かれどころではと思いました。あれ程冷静だった柳田が、自分を盗っ人と思われただけであれ程激怒するなんて。それまでの源兵衛や弥吉とのやり取りは何だったのかと少し肩透かしを喰らってしまいました。

 とある場所での殺陣シーンも、迫力はありますが柳田の都合のためにいろんな人が切り捨てられいるし、この人達は招待されて囲碁をしにきただけなのにとんだ迷惑です。と、ちょっと主人公のご都合主義が働きすぎたところありましたので、これくらいの点数となりました。が、囲碁と時代劇を混ぜたのは非常にバランスが良く、最後まで飽きずに見ることができました。介錯のシーンのみ、あ、これは白石和彌監督の作品だと思えたのもよかったです笑 それにしても、時代劇って大体殺陣シーンが多くて人を斬り捨てるイメージが強いジャンルでしたが、今作はその要素が少なく、真剣勝負も囲碁で、というところが新しかったのでそこは良かったと思いました。

 先週鑑賞した『ミッシング』も凄まじい作品であったため、高レベルの対決でしたが今回は吉田恵輔監督の新作に軍配が上がったことにさせていただきます。しかし、両名の才能には脱帽せざるを得なく、今後もご活躍を期待しています。
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