凛

碁盤斬りの凛のレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
4.3
白石和彌監督、初の時代劇は本当に美しい。
囲碁を中心として人間関係が回り、配役も多くもなく少なくもない。
殺陣もちょうど良い長さ。

嫌疑をかけられて、娘(清原果耶)と共に江戸で浪人暮らしをする柳田(草彅剛)はまさに清貧の暮らし。
清廉潔白である父との暮らしの中でも、ささやかな幸せを感じていた。
ある時、大店の萬屋の偽物騒動をおさめたことから、亭主(國村隼)気に入られ、碁を打つ仲間となる。

江戸時代の戦の無い時期。
士農工商で武士は位こそ高いけれど、商人の方が圧倒的に資金を持っていたり、ちょっとした逆転現象が起きている。

貨幣の価値も全く違い、貧乏長屋で暮らす人達、吉原の遊女へ売られる人達に取っては一生かかっても拝めない金額も、他愛のないものであるかのような萬屋の扱い。

新たな嫌疑を晴らすことと、藩を追われた原因である因縁の武士柴田(齋藤工)を探すために旅に出る。そして娘の覚悟。
柴田は卑劣極まりなく、碁盤を返したりするタイミングも絶妙。しかし、実は人を救っていたと、聞いて。

正しくあることは基本的な人間の美徳であるが、他者へも同様に全て正しくあれ、というのは限度がある。
平時の藩の暮らし向きの苦しさが垣間見られる。
柳田自身は全く気付かなかった他の者の苦しみに思いを馳せる。

落語が原典になっているようで、いささか都合が悪い良すぎる気もするが、一連の流れに破綻はなく、柳田の精神性は一貫している。

草彅剛の穏やかな表情と、強い怒り、殺陣。武士としての品格を感じさせる。若手の清原果耶、中川大志もまっすぐで良い演技をしている。
エキストラでも美しく囲碁が出来る人が選ばれて、徹底した絵作り。

この美しい日本映画を海外向けにプロモーションできないかどうか考える。
凛